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怪談文庫
クラインの壺ーー僕はこれが一番怖い。
未来のある一点から、僕が過去を思う時、過去の自分は未來を思い返して過去だと認識しているのではないのかーーー
未來の自分がヒッグス粒子を使って過去を思う時、ある一点に居る過去の自分は、既に経験し過去となった未來を思い返している。
最初の過去を思う自分と次の未来を思い返す自分を客観視して、それが輪廻となる時、このメビウス・クラインが始まる。時間のパラドックスから抜け出せなくなるんだ。どうですか?怖い話しでしょう?ヒッグス粒子を使いこなす人間にとっての恐怖でした。
ヒッグス粒子を使いこなさない人間には、いまいち分からない話しだーーーー。じゃあ、順を追って説明しましょう。まずヒッグス粒子と云うのは分かりますか?斑鳩一族が先天的に使う時空を越える粒子の一つです。斑鳩一族と云うのは彼の宝光寺を基盤とする真言宗の一族です。
メビウス・クラインと云うのは、作家のパラドックスにも似ているーーー時間の輪廻だーーー。
宝光寺と云うと…。あのアイドル黄泉平坂49を発掘した芸能プロダクションを兼ねた宗教法人の?
そうです、梶浦山の麓にある音大梶浦学園のアイドル黄泉平坂49の所属プロダクションの……です。
黄泉平坂の娘達は斑鳩一族ではないの?あ、そう、菫ちゃん達よね?やっぱり斑鳩一族よね。
一本の時間軸があります。過去の自分が、ヒッグス粒子の力で、時間を越え未来を思う時、未來の自分は、既に経験済みのカテゴリーに位置する記憶を過去として脳内に留め置く。次にその、未来の自分と、過去の自分が記憶を介して時空を越えシンクロするのね、この時、過去の自分には未來が垣間見える。
見えるんだ。つまり、、、、人類の文明が荒廃しているのが。それは文明を内包する人類と云う呼び名の滅亡を意味しているだろう?
我々は、こうして知ったんです。ウイルスによる人類滅亡を…。
どうしても…貴方を救いたくて…救いたくて…。
キョウモマタ…
カノジョノササヤキデ…
メガ…サメタ…
僕、文庫瑠璃がココ鳴釜神社が在る西奈良村に戻ったのは、中学生の時以来だ。
父親の仕事の都合で、一時、村を離れ県内の親戚の家で世話になっていたのだ。それから10年が経ち、僕は西奈良村に舞い戻ったが、しかし、、、帰郷した妖怪村こと、西奈良村は以前住んでいた頃とは姿を代えてしまっていた。まず、鳴釜神社に斑鳩とか云う歳上の男子が住み着いていたのだ。後輩の女子に人気の生け簀か無い野郎だ。斑鳩はいつも菫と云う娘を引き連れていた。この村が妖怪村と謂われる由縁ーー妖怪に関する伝説が多いーーこれに尽きる。その娘の存在する経緯と理由も、だ。
その娘は黄泉津平坂49のメンバーだと云う、一体何の事やら…。
しかし変わったのは神社だけではない、僕の方も以前とは代わっていた、タケノコ書房の怪談コンテストで投稿作品が優秀作に選ばれ、書籍収録を果たしていたのだ。タケノコ書房には、叔父とのエピソードを投稿した。
叔父の晴明は自称陰陽師の変わり者だ。
怪談――淡島の怖い話し
語り 文庫瑠璃
青春期に晴明の運転する車で伊豆半島を南下して、祖父の出身地である漁村方面に向かっていた時の事だ。
此処にはツチグモ一族の財宝が隠されているんだーー
晴明が指差す先には駿河湾に浮かぶA島が。
夜中に堀に行ってみるかーー?
日暮れも迫る頃、そう訊かれたが、もし祖父の一族が土御門一族なら叔父
を通して此方の動きはツチグモに筒抜けなのだろう。
身の危険を感じその場は断った。
そう遠慮するなって、瑠璃。
しかし叔父さんはしつこかった。結局根負けし、島に向かう事になったのだ。
そして、、、僕、文庫瑠璃は菫を名乗る事となった。
菫は可愛い娘だった。
一方、斑鳩月渚も、僕と同じく、地下牢の宝箱を開けたら煙に包まれあの容姿に変化したようだ。
美形の彼、、、と、あの夜、民俗学部のみんなで見た月夜。スマホから流れるメロディと元旦の朝焼けをバックに撮影した想い出の一冊。怪談ーー妖怪伝説。
あれが僕達の怪談に賭けた青春の始まりでもあったーー。
産まれて初めて妖怪を目撃したのは、西奈良村にて、妖怪鳴釜が最初だった。
そう、彼と、、、二人で目撃したんだ。私と、彼の二人だけの一人で。
私と月渚は、二人で一人の妖怪人間でもあった。
私ーー否、僕、文庫瑠璃は憑依のスペシャリストでもあった。他人の身体を乗っ取れるのだ。だから片割れとはいつも一緒。片割れの彼とは同一の存在なのだ。僕はそう想っているけど…。彼はそう想っていない節がある。自分は自分、ウチの中に誰かが居るーー。ひょっとしたら文庫瑠璃かもしれない。俺は斑鳩月渚の筈だ、と。
ツチグモの漁村は、西奈良村と言い、村域のA島に鬼を隠していたーー。
まだ幼い鬼だーー少女の鬼を隠していたのだ。
「どうして此処に監禁されているの?」
遠い未来の両親二人がーー絆を認め合わないからよ。
絆ーー?
二人で一人の身体。その為に産まれた私のこの不死身の身体ーー。
式鬼の身体ねーー?
うん。
淡島神社に祀られた人形の中でも最も良く出来た式鬼がその役目を担った。
妖怪を使役可能だーー。
この淡島神の能力と賀茂一族に受け継がれた異能力を使えばな。
使ってみるか?
あなたが暮らす神社の神様、鳴釜を呼んでみて。
怪談ーー鳴釜。
夕焼けの園庭の隅にその園児達を見付けたのは、彼等が無邪気に騒ぐ声に気が付いたからだった。
「ジャンケンポイ」
仲間に入れてよー。
「いいよ、だけど、お前が負けたら俺達のクラスに入らなきゃならないよ?」
園児達はそう言って園舎の裏手に回り込んだ。園舎の裏手には、鳴釜神社から流れ来る小川しかない筈だ。
数日後、道路で遊んでいた私はバイクに跳ねられ入院した。
入院中、何度か思いだそうとしたあの時の記憶ーー。私はジャンケンに勝ったのか、それとも負けたのか。確かーー負けたのだと思うわ。だから轢かれたのね。そして今この身体を与えられた。妖怪の身体を、授かったのよ。でも何か変。頭に角がついてるしーー。
鬼みたいな頭だわ。妖怪なのかしら?鬼の…娘?名前は?
ーー菫ーーが良いわ。魂は文庫瑠璃ーー。普段は気のある男子に憑依ばかりしてるツチグモ一族の女子ね。妖怪に変化する時は鬼であるあなたの身体を使うわ。
夜中の浜辺は美しかった。ライトアップされていたんだ。
対岸では花火が上がっていた。砂浜が色付く度に心に唄が流れた。知らない唄だ。憑依している文庫瑠璃が唄う唄だったのかもしれない。
「あれは何?」
突然、心臓がドキドキした。見上げると、楕円形の光る物体が上空に浮いていた。
「結局、何だったのだと思うの?」
「鳴釜です。妖怪の」
「百器徒然袋には、頭が釜の妖怪が絵馬を手にした姿で描かれています。石燕による解説には『白沢避怪図』(『白沢図』)にあるとされる…」
中国における釜などを鳴らして音を出す妖怪・斂女についての文が引かれている。室町時代の『百鬼夜行絵巻』にも釜の妖怪が描かれており、これがモデルになって描かれた妖怪であると考えられている。
「それが元旦の朝焼けの中に現れたのだと?」
「撮影もしました」
スマホのギャラリーを閲覧して見せる。
「これは…幻日じゃないの!珍しいわね」
千代子さんがその画像、欲しいわ。と所望する。朝日に寄り添う幻の太陽は、肉体を持つ月渚に付きまとう文庫或いは不死身の身体に付きまとう文庫を彷彿させた。ーー幻の魂。見上げると、楕円形の光は飛び去る所だった。月渚の身体に憑依していた文庫は、海岸沿いの駐輪場に走ると、彼のバイクに飛び乗りアクセルを吹かした。幻の光の如き鳴釜は西奈良村の北に聳える鳴釜山へ向かっている。
この鳴釜神社には併設された古刹がある。
天狗を奉る寺だが、一般人の参禅を引き受ける修行寺でもあるのだ。
夕方の禅を終えて、床に就いてからだった。
宿泊する客間の四方から狂った様に走り回る足音が聞こえだした。
足音は瞬間移動するが如く瞬時に方向を変えて此方の聞き耳を煙にまいた。
天狗は悪戯を好むと云う。
まさか寺の禅僧が瞬間移動する訳は無いので、妖怪の悪さだと思っている。
鳴釜山から連なる梶浦山は、A島を一望するリアス式海岸の背後にある。梶浦山からは、夜明けと共に、朝日を浴びる富士山も一望出来、絶景だった。
斑鳩が主催する妖怪サークルの副部長、尾道不由美と云う歳上の女があった。和風カフェ百目鬼のオーナー夢女とは仲が良いらしい。5歳の菫、15歳の菫は式鬼人形だった。では25歳の千代子さんと同一に見える尾道不由美や夢女さんは?彼女達も又、菫さんだろうか?
そう、多分同じタイプの式鬼人形。
何故菫さんタイプの式鬼人形は怪談を求めているのか?
菫さんではないーーー魂である文庫瑠璃が怪異と月渚に恋してるからだ。怪異と月渚。また怪奇現象と男子とは変わった組み合わせに恋する女子だな、文庫ちゃんわ。
「ある怪異と月渚君が…」
尾道不由美ーー怪談天狗。
「…リンクしてるのよ」
僕、文庫瑠璃は憑依のスペシャリストでもあった。他人の身体を乗っ取れるのだ。だから片割れとはいつも一緒。片割れの彼とは同一の存在なのだ。僕はそう想っているけど…。彼はそう想っていない節がある。自分は自分、文庫瑠璃じゃない。斑鳩月渚だ、と。
ツチグモの漁村は、西奈良村と言い、村域のA島に鬼を隠していたーー。
まだ幼い鬼だーー少女の鬼を隠していたのだ。
「どうして此処に監禁されているの?」
遠い未来の両親二人がーー絆を認め合わないからよ。
絆ーー?
二人で一人の身体。その為に産まれた私のこの不死身の身体ーー。
式神の身体ねーー?
うん。
淡島神社に祀られた人形の中でも最も良く出来た式神がその役目を担った。
妖怪を使役可能だーー。
この淡島神の能力と賀茂一族に受け継がれた異能力を使えばな。
使ってみるか?
あなたが暮らす神社の神様、鳴釜を呼んでみて。
小学生の時の話しだ。ある日、バスで鳴釜神社まで遠足に行く事になった。
お昼の時間になりお弁当を食べていると、一人の山伏が近付いて来て「一緒に行くか」と問う。唐突過ぎて断ると、山伏は他の生徒の元に行き、何やら話している様だった。
帰りのバスだった。山伏と話していた生徒の姿が見えないと気付いたのだ。その生徒は、その後学校に登校して来なくなった。「最近、斑鳩君見ないね」とクラスメイトに問うと、「誰それ」と返って来たのだった。あの山伏の正体は天狗で、斑鳩君は神隠しに遭ったのだと思っている。
妖怪伝説に収録された…怪談天狗…ね。
どうですか…?編集長?
僕は今、妖怪を使役出来る特技を活かして怪談作家の道を歩もうとしている。オリジナルレーベルを発行する和風カフェ百目鬼に出入りしているのだ。此処では怪異は通貨として取引され、また通貨としてレートもある。
文庫ちゃん、また妖怪モノかい?
オーナーの夢女さんがサービスのエスプレッソを煎れてくれた。
ついでに苦味のある講評もくれる筈だ。
まず文庫ちゃんはさあ、怖いって何だったかを忘れてるよ。体験者である君が如何に怖い思いをしたのか、そこが描写されてないモノ。それを表現して読者に伝えて初めて怪談と言えるんじゃないのかなあ、、。
これはある怪異の体験者の実体験だ。
怪談切れる血管ーー去年は怪談応募の為に心霊スポットを往き来するのに忙しい日々を過ごした。夢野津宮と云うパーティを組んだが、代表である自分に災厄が集中したのか、以来三度も脳の血管が切れて入院した。
N本平のN邸は、駿州屈指の心霊スポットと云われ、其処で廃屋から覗く白い顔を撮影したのが運の尽きだったのかもしれない。
N邸では、白い顔を皮切りに、数枚の顔を撮影していて、切れた血管の数とも一致する。
呪われた顔を撮影した者には、撮影した回数と同じだけの死の恐怖を…と云う祟りだろうか。
5歳の時と15歳の時にも、同じ様に菫の身体を乗っ取ったのか。じゃあ次は25歳の時?それって千代子さんでは?千代子さんの正体は?《世界一怖い怪談を求めて輪廻する和風カフェ百目鬼のオーナー夢女。》
私こそ25歳の菫にして、妖怪サークルの副部長尾道不由美、そして百目鬼怪談文庫の編集長夢女、その正体は!
菫と斑鳩月渚と文庫瑠璃と尾道不由美と百目鬼夢女の心の声ーーー千代子でした。
二人で一人の身体。その為に産まれた私のこの不死身の身体ーー。
妖怪の身体ねーー?
うん。
淡島神社に祀られた人形の中でも最も良く出来た式神(式鬼)がその役目を担った。
ーーー妖怪を使役可能だーー。
ーーーこの淡島神の能力と賀茂一族に受け継がれた異能力を使えばな。
ーーー園児達はそう言って園舎の裏手に回り込んだ。園舎の裏手には、鳴釜神社から流れ来る小川しかない筈だ。
ーーー数日後、道路で遊んでいた私はバイクに跳ねられ入院した。
入院中、何度か思いだそうとしたあの時の記憶ーー。私はジャンケンに勝ったのか、それとも負けたのか。確かーー負けたのだと思うわ。だから轢かれたのね。
ーーーーそして今この身体を与えられた。妖怪の身体を、授かったのよ。でも何か変。頭に角がついてるしーー。
鬼みたいな頭だわ。妖怪なのかしら?鬼の…娘?名前は?ーーー月渚ーー。魂は文庫瑠璃ーー。
夜中の浜辺は美しかった。ライトアップされていたんだ。
対岸では花火が上がっていた。砂浜が色付く度に心に唄が流れた。知らない唄だ。憑依している文庫瑠璃が唄う唄だったのかもしれない。
「あれは何?」
突然、心臓がドキドキした。見上げると、楕円形の光る物体が上空に浮いていた。
千代子さんがその画像、欲しいわ。と所望する。朝日に寄り添う幻の太陽は、肉体を持つ月渚に付きまとう文庫或いは不死身の身体に付きまとう文庫を彷彿させた。ーー幻の魂。見上げると、楕円形の光は飛び去る所だった。月渚の身体に憑依していた文庫は、海岸沿いの駐輪場に走ると、彼のバイクに飛び乗りアクセルを吹かした。幻の光の如き鳴釜は西奈良村の北に聳える鳴釜山へ向かっている。
この鳴釜神社には併設された古刹がある。
天狗を奉る寺だが、一般人の参禅を引き受ける修行寺でもあるのだ。
夕方の禅を終えて、床に就いてからだった。
宿泊する客間の四方から狂った様に走り回る足音が聞こえだした。
足音は瞬間移動するが如く瞬時に方向を変えて此方の聞き耳を煙にまいた。
天狗は悪戯を好むと云う。
まさか寺の禅僧が瞬間移動する訳は無いので、妖怪の悪さだと思っている。
斑鳩が主催する妖怪サークルの副部長尾道不由美と云う歳上の女があった。和風カフェ百目鬼のオーナー夢女とは仲が良いらしい。5歳の菫、15歳の菫は式鬼人形だった。では25歳の千代子さんと同一の夢女さんは?菫さんだろう。多分同じタイプの式鬼人形。
何故菫さんタイプの式鬼人形は怪談を求めているのか?
ーーー文庫瑠璃が怪異と月渚に恋してるからだ。怪異と月渚。また怪奇現象と男子とは変わった組み合わせに恋する女子だな。文庫ちゃんわ。
尾道不由美ーー怪談天狗。
天狗は実在するの?
小学生の時の話しだ。ある日、バスで鳴釜神社まで遠足に行く事になった。
お昼の時間になりお弁当を食べていると、一人の山伏が近付いて来て「一緒に行くか」と問う。唐突過ぎて断ると、山伏は他の生徒の元に行き、何やら話している様だった。
帰りのバスだった。山伏と話していた生徒の姿が見えないと気付いたのだ。その生徒は、その後学校に登校して来なくなった。
「最近、斑鳩君見ないね」
「ああ彼ね。天狗に成ったわ。あなたが片割れと認めないから!」
あっははははは。
「実在するわよ、天狗はあるわ。斑鳩君がいつまでも自分を好きで居てくれると想って憑依している貴女の傲慢の事ね」
「斑鳩君、どう想ってるの?」
「え、ナニ~?」
「憑依されてうざくない?」
「あ全然。瑠璃、可愛いから許すよ、全然大丈夫」
彼、、、ちょっとチャラくない?
チャラいかもしれない。
文庫を…を手込めにした記憶があるくらいだからな。
ソンナジブンガユルセナクテ、ボクハジサツミスイモシマシタシーーーー。
暗い暗いトンネルとホーム。何処かの地下鉄。ホームの隅に立つ文庫と斑鳩ーーー
貴方を救いたくて……。
瑠璃…………。
文庫がしつこく月渚に付きまとって憑依している理由ね、それはあなたの自殺未遂の理由が知りたいから。
あの日、あなたはどうして手首を切ったの?
私のせい?
そんなの悲しくて嬉しくて受け入れられない。
文庫が妊娠出産したのは、あなたに手込めにされたせいなのかーーー
そう記憶にあるのね。
でも、その記憶は憑依されやすい体質の貴方が貴方でも私でもない何かが私の双子の姉妹か何かを無理やり手込めにした際のイツワリの記憶だと思うのよ。
千代子さん…。
いつ、どんな場所で事件は起きたの?
「この鳴釜神社の境内で…」
「僕の記憶には、そんなの残ってないよ!」
「でも…瑠璃」
「第一…僕妊娠した記憶が…ない」
じゃあ俺の記憶は…。
偽りのキオクね。
「誰が作成したイツワリのキオクなんだよ!」
「スミレちゃんだよ」
夢女さんーーー。
「うん、スミレさんね」
尾道さんーーー。
「うん、スミレさんしかイナイ」
草薙さんーーー。
彼女の正体はーーー?
文庫瑠璃ちゃんと斑鳩月渚君の理想の未来の姿だよ。
完璧な肉体の完璧な姿ーーー。
彼女は自分を誕生させようとしたんだーーーー。
その日の夜は、夜を徹して梶浦山山麓のコンビニではチキンを揚げていた。
伊豆半島を司る神道の神に五十武命があるが、彼は怨霊を鎮める神様でもある。
赤島に供養された人形の中には、〝どうにもこうにも簡単には供養出来ない部類の物〟も中にはある。所謂怨霊のレヴェルまで危険度が高まってしまったパターンだ。
本日は、そんな怨霊人形の御話し、、、。
その人形が来た時から何かオカシカッタそうだ。
所謂ガン見ってあるでしょ。寝室で寝ていると暗闇の中からガン見される気配があるのだ。で、眼前の闇をまさぐると手が空を切るのではなく繊維を掴む。人形と同じ色の髪の毛なのは予想通りだとしても、これが此方の鼻腔から抜けてくる所までは予想出来まい。ずるうっと…な。この人形に纏わるエピソードがあるが、此がまた悲恋に纏わるエピソードだ物だから、ポケットティッシュ無しでは聞けないよ?
え、聞くって?物のついでだ?あ、そう。じゃあ、話そうかな。この人形には赤いおべべがセットであってね。お人形の本体が仕舞われているN津の博物館では、お人形も
見れるし、お人形の霊も見れるしで文句無しなんだけどね。
悲恋と云うのは戦中の事だが、ある村の娘にある時、村外の男が通う様になった。しかし村長は「なに…一時の気の迷いよ」とそれを許さず、娘と男は引き離されてしまう。
しかし娘は「私の愛した人との愛が真実ならば、赤島に赤い牡丹が咲きましょう」と言った直後に空爆の露と消えてしまったのだ。
その後、娘が空爆に遭った千本松原の博物館に、彼女の悲恋を描いた浄瑠璃の人形が納められたが、赤い花柄の着物の女性も目撃されるようになったと云う。
「何故、、、、彼女は怨霊となったのでしょうか…?」
月渚がテーブルのメモに赤い花柄を描きながら聞いた。
簡単だよ、村長に恋を邪魔された、或いは邪魔されて悲恋の内に空爆で亡くなって無念だったからだよ。
赤いおべべは生前愛した牡丹か何かの色だろう?
何もおかしい点は無いじゃないか。
「鼻からずるうっと抜けるのは?」
体験者が鼻毛の処理を忘れていただけだ。
しかしながら着物が赤いだけでは危険度が高くないのでは?
何故この幽霊が本日のテーマとなったのか判りかねます。
聞けんど!と云うのはだな。あれだ。薩摩だか、長洲だかの方言で聞けないって意味だ。
とても聞いて居られないと云う意味でもある。
「人形が恐ろしいと云う意味ではないのですね?」
主にその意味でもある。
「どの様にですか?」
大した事は無いんだが…夜中に包丁持って彷徨いたりするだけだ。
「それは…随分危険で怖いですね」
そして扉を閉め様とすると、ギリギリで扉に包丁を挟んで来るんだ。
「とても怖いじゃありませんか」
「なあ、月渚君、この前文庫ちゃんに怖いって何だか疑似でも良いから感じて読者に伝えろって説教したけどさ。直球過ぎないか?包丁人形はよぅ」
「文庫から聞きました。
だから今、テストだと思ってやってみたんですが……」
じゃあ次。
「ごめん下さ~い」
お、文庫ちゃん、良いタイミングで来るねえ。
カラアン。
うわ、扉を開けたらいきなり包丁持った人形が出迎えるって怖いですね。
丁度良いや、この人形で怖い話し、作ってみな。
では、、、、、。文庫が何か思い悩む様に腕を組むと、人形も自ら動いてその仕草を真似した。
「えっと」
スミレね?スミレちゃんでしょう?
声色が変わったのを聞き逃さない。
この場は怖い事をすれば良いのね。
人形の表情が突然変わると、口許は文庫に、目許は月渚に似た物となった。
「これでどう?」
歯並びが、文庫瑠璃の八重歯と瓜二つになる。
娘と同じ様な存在だと判っていても、瓜二つに成るのは少し気味が悪い。
そこで悪戯心を出して少しスミレがじゃれついた。
「お父さん、お母さん」
「ううん、不気味だ」
で、でも切ない物も感じたーーー
斑鳩月渚と文庫瑠璃はそう思って顔を伏せた。
僕は恥ずかしい事をしたのだろうか。
初めてお父さんとお母さんを前にして、スミレ姉さんと同じ様に八重歯を伸ばしてみせたのだ。スッカリ鬼の形相だったと思う。
僕はスミレの妹の灯ーーー
妖怪人形の式鬼人形は天狗に属する。
赤い鼻をトナカイの如く光らせ、両の牙を剥いてみせるのが得意技だーー。あと、もう一つ得意技がある。病気平癒のオマジナイだ。此れはカラス天狗の一族、八咫烏の一族に伝わる秘伝だ。先祖が賀茂とか名乗っていた頃から伝わる秘伝のオマジナイなのさ。
「この秘伝のオマジナイは使いこなせる奴と、そうじゃない奴が居る」
このパンデミックの時期に、月渚さんの言葉は残酷だった。使いこなせない者にはーー死ねーーと言っているのか。
「お金は取っても良いのですか?」
スミレが挙手する。
「イヤ、駄目だ。我々斑鳩一族は金銭と引き換えにマジナイを施す事を禁じている」
「いつから、、、、、、いつ頃から、、、パンデミックの事は判っていたのでしょう?」
「先祖代々住む斑鳩には、未来記と云う予言書を残した聖徳太子も暮らしていたーーー。果たしてパンデミックの予言があったかなかったかは不明だが、可能性は拭えない」
「僕達オマジナイ使いの遺伝子が人工受精に使用される為取り引きされていたと云うのは…?」
僕達はその遺伝子から作られた。
斑鳩月渚父さん、文庫瑠璃母さん。妖怪人形と呼ばれるスミレや僕灯タイプの式鬼は、みな二人の子供だ。
みな生き残れるのかな。
あ、あれは牡丹ちゃん。怨霊人形の。リアス式海岸の下に彼女の赤い襦袢が見えた。私達人形にも死は訪れるのだろうかーー。怨霊人形の牡丹ちゃんは、死神の如く生者から嫌われている。怨霊ーーー怨念だったら私だって強いのに、、、。スミレ姉さんが悲しげな表情をする。僕がかんがえている事を察したのかな。
最近牡丹さんと草薙さんは上手く行ってるのだろうか。この前は、どーして私の事が好きなのかって責められてたな、男勝りの性格が好きなんだとか。牡丹さんは男性の癖に女々しい部分もなくて女房役と呼ばれる草薙さんに魅力を感じているようだ。その草薙さんの怪談ーー牡丹ーー行ってみましょう。
最近、牡丹の様子がおかしい。ボカロと会話してるから、疑似恋愛でもしてるんだと思っていたら、殺す、死ね、と云う物騒な台詞が中にはあって驚いた。ボカロの声は俺そっくりだった。
斑鳩月渚と文庫瑠璃の遺伝子を使った式鬼人形は全部で20体もある。
その内、パンデミックに対応してオマジナイが得意な奴は5体のみ。
自分は明日生き残っているだろうかーーーそんな悩みを加速させているのが、オマジナイが得意な奴等が確実に居ると云う事実だ。
明日、死ぬかもしれない、生きるかもしれない。このサバイバル感が堪らないと云う式鬼人形も居れば、嫌だと云う奴もある。
灯、菫、はオマジナイが得意だった。他の15体とは運命を別けたのだ。他の式鬼人形の中には輪、炎、薫が含まれていた。オマジナイが得意にもかかわらず彼等は其を秘密裏にしていたーーー。
オマジナイが得意だから自分達は生き残る筈だ。そう思っていたがーー恋はオマジナイが得意ではない組に入る鴉に恋していた。
彼等もまた、運命を別けたのだ。
俺達に勝目ナンか無いよ、、最初から秘伝だの何だのの遺伝子は与えられてないし、スーパーワクチンも未だだしよお。だけど家業を破棄してでも戦うしかないのよ。負けたら死だから、生きてえもん、死にたくねえもん、、、。
そうだろ?草薙ちゃんよ?
ええ、夢さん。
ここで飯ネタを1つ。
その焼きそばドーヨ?男のメシネタの1つよ?えあ?
文庫ちゃん、牡丹人形の怖い話しはどーなた?
牡丹さんが空爆に遭ったってな、あれ赤島での事だぜ。
戦時中、牡丹さんが赤島に渡った時の出来事らしい。
これから牡丹さんと、菫、灯、月渚、僕、瑠璃、恋、そして鴉君。それぞれのエピソードと閉めの怪談を紹介して行きたいと思います。
まず、牡丹さんから。
赤島での出来事は悲劇でした。島には、潜水艇を収納するプールがあったのですが爆撃の目標は、そのプールだったと思われるのです。
島へ渡ったら、許嫁と二人だけの生活をして結婚しよう。そう話していました。だけど渡って直ぐに空爆に遇って、結婚の約束をした二人は戦火の犠牲となってしまったのです。そして最近の牡丹さんはと云うと…。亡くなった時の姿に戻りつつあってとても供養されてる霊とは思えないのです。何故でしょう。
無益にお亡くなりになられた方が、余りにも多いからです。アメリカを始め世界では数百万人の方が亡くなられています。私牡丹も空爆で命を落とし、死を晒したのです。とても他人事とは思えません。お亡くなりになられた彼等と、私達戦火の犠牲に縁があるならば、共に供養されて何の差し支えがありましょうか。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。
言い終えると牡丹さんは包丁を仕舞って和風カフェの厨房に入って行った。
「許嫁と再会したいねえ。降霊術でもやろうかしら」コックリさんの事ですか?
「そう、一番簡単な降霊術ね」
「鴉を呼び出したいな」
恋ちゃんが恋していた去年亡くなった式鬼人形の男子だ。
お前ら~簡単にコックリさんに手を出すなよ~。
夢女がしゃしゃり出る。
夢女
怪談ーーコックリさん
ザクロの如き頭だったと云う。そのコックリさんだよ。頭蓋骨が見えちゃってたんだ。
嫌だ、グロテスクね。狐狗狸って書くなら可愛い動物ばかりでしょ、あんなのが正体だったなんて。
何で見えちゃたんでしょう頭蓋骨。
殺された時に殺られたって言ってたわ。
夢女さんは語り終えると厨房に引っ込んだ。
草薙さんが問う、「最近の和風カフェ百目鬼では新メニューはやらないのだろうか」
「新メニューねえ、ライバル店舗の様子はどーだい。新ハンバーガーやってるかい?」
夢女さんがライバル店舗と呼ぶのは、西奈良村から少し北へ向かった所にある遊水池のキャンプ場に併設されたハンバーガーショップの事だ。遊水池はカッパの池と呼ばれていて、向こうは向こうで妖怪を売りにしていたりする。
去年、鴉はこのハンバーガーショップカパリンにてアルバイトをしていた。
カッパの着ぐるみを着ての恥ずかしいアルバイトだったが、店長もアルバイトのこの店舗に於いてかなり気楽な勤務だったようだ。鴉は結局ウイルスの飛沫感染で亡くなった。繊細な少年で恋とは、静かにそして穏やかな恋愛関係だった様だった。そんな二人が盛り上がった時期があった。去年の夏ーーハンバーガーショップも新作メニューの頃だ。鴉が提案したメニューが採用されてボーナスが貰えたのだ。二人は遊園地に出掛ける事になった。和風カフェ百目鬼としての功績と云えば遊園地のお化け屋敷が実在する有名な廃墟を移築したもので、怪奇現象が起こった事だろう。
屋敷内で写真撮影すると部屋によっては実在しないフォトフレームが写った。そこには実在したか不明の男性が写っており、写真の中から鴉の背中に腕を伸ばしていたのだった。
その男性に抱き付かれて数週間後、鴉はウイルスに感染した。
後は、後の祭りだった。病院のベッドの上から帰れない彼を見送るしか出来なかった。
夢女さんが泣きながら、「因みに鴉君が提案したあの年の新作メニューって?」
黒はんぺんバーガーですよ。
「コックリさん、やってみる?」
鴉君を呼び出すのかい?
「後でみんなでやりましょう」
ああ、何だ、鴉と話したい奴は居るのかい?鴉君鴉君鴉君ですか?
はい
10円が動いて、返事をする。
鴉君は天国に行きましたか?
はい
地獄ですか?
いいえ
鴉君は恋ちゃんを今でも好きですか?
はい
その後、たわいもない会話が続いた。
しかしそれが一変する。
恋ちゃんと草薙さんが最近仲良いそうですが御祝いしますか?
いいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえいいえ
ぎゃあああああああああああああ
わたしゃ思わず悲鳴上げたよ。
文庫
恋ちゃんが最近鴉君の写真を例のお化け屋敷に持って行ってフォトフレームごと写真撮影しているのです。
止めさせますか?
いいえ
いつか鴉君がフレームから出てきて再会出来ますか?
はい
菫ちゃん、灯ちゃん。何か新作メニューないかなあ。
カフェなんだからパフェとか出したらどーですか?
菫ちゃんが自分の好みを勧める。
まるごとバナナのパクりになりますけどお、バナナフランクフルト何てどーです?
三日後
菫ちゃん菫ちゃん、これどーよ?
カパリンのカッパバーガーに対抗して天狗の鼻フルト作ってみたよ!
灯が失神する。
自分の赤鼻が取れちゃった。そう思ったのだと後に語っている。
ある雨の朝、月渚が見付けて来た少女。名は恋と言った。聞けば式鬼人形の少女だと云う。生まれたばかりの式鬼人形は意識が微睡んで心許ない。あの日の朝の恋がそうであった様に。
私はどうして此処に居るの?
生を授かったからだよ。
生ーーー
そう、誰にもーーどんな意識にも最初に訪れるステップ。
それはどんな物なの?
平等で、希望に溢れ、ありとあらゆる可能性を秘めた物だよ。
平等ーー?
死みたいな物ですか?
否、分かち合う物ーーだ。
もし一部の人間が喜びや楽しみの独占を止めれば、鴉君の言う様な死を平等な物として早めに自ら受け入れる若者も減るンじゃねえかなあ。実際、死は時や生と同じように平等ではないんだ、、、メンタリティーが伴わない。希望とか夢みたいにな、死が訪れるとそこで終わっちまうんだ。それに対して生には始まりのメンタリティーが伴う。希望と、夢と、目標だ。何れも魂に力をあたえてくれるメンタルだろ?な、月渚君ーーー君は何故手首を切ったんだ?
彼女にーー文庫瑠璃に乱暴を働いてしまったからです少なくとも俺、斑鳩はその記憶を持っている。
でも、僕、文庫には、その記憶がない。謎です。
何故か、私、菫にもその記憶があります。
その乱暴の結果、菫君は誕生したと云う展開だったかな?
はい、月渚さんと、文庫さんの子供だと…。
でも、実際には式鬼人形だから陰陽師の春明叔父さんが作った人形だ。
はい、今年生まれた灯ちゃんと同じです。
晴明氏が謎解きの鍵だな。
灯が生まれてからは、新たに式鬼人形は作成されていないーーー
灯はオマジナイが得意だったな、ヒントは其処にある。
和風カフェ百目鬼は斑鳩一族によって運営されている。此処まで登場した斑鳩一族は、月渚、文庫瑠璃、晴明叔父さん、草薙さん、夢女さん、の5人。牡丹さんと、菫、灯、恋、鴉、はその他のメンバーに入る。
奈良の本拠地斑鳩に住む大叔父の柳田国彦は一族の長だ。
和風カフェ百目鬼のメンバーにも、その他のメンバーでもない。しかしバックには有名な議員や著名人がついてるって噂だ。
もう1つ噂を云えば、柳田の目的は、オマジナイが得意な式鬼人形を手に入れ自分達だけパンデミックを乗り切るつもりだったと…。
灯の能力に満足した柳田がもう式鬼人形の作成はしなくて良いと指示を出したのかもしれない。
それは違うーーー柳田は旅団をつくろうとしている。
「久し振りだな、文庫瑠璃」
晴明叔父さん…違う…!千代子さん!?
いつの間にか端正な顔の女性がカフェのテーブルに付いている。
あたし今、千代子さんって、どーしてそう思ったのかしら…?千代子さんは、心の声に過ぎないはず…姿があるなんて!
「生まれて良い?」
ええ…!?
「憑依の特技を持つ文庫瑠璃よ、その特技を使って千代子の人格を式鬼人形菫に宿しても良いか…?」
ある日こんな夢を見ました。何処かの神社に行って、白羽の矢が飛んで来て其れを左手の指先で受ける夢です。飛んできた方角を見やると、真っ白な山犬が…。目が覚めて指を見ると、矢を受けた凹みがありました。
そして後日、ある神社に行くと絵馬が付いた破魔矢が売られていたんです。絵馬に描かれた絵は真っ白な亥、その亥が余りにも件の夢の山犬にそっくりな物ですから破魔矢を購入してしまいました。去年、大きな病気をやったのですが、破魔矢を置いてあった神社の近くの病院に運び込まれて無事でした。もし、あの時、破魔矢を購入してなかったら…命運も変わっていた事でしょう。
「そういえば…千代子さんって巫女さんなんですよね」
「えっ違うよ、みんなの心の声なだけだよお」
「以前、千代子が勤める神社で御神籤購入して御利益あった事があります」
「ええっ、私、神社勤めじゃないよお」
「五年前の出来事です…高野山に行くきっかけとなったある出来事がありました」
「おお、高野山かあ、高野山なら俺も怪談があるぜ、白蛇の祟りって奴だ」
夢女さんが焼きそばを頬張りながら言った。
「そうですか…僕のは白犬の御利益の御話しが続きます」
「じゃ、まず祟りから行くか」
高野荒神を奉る一画に一本の杉が立っている。この杉には白蛇が住んでいると言ってな、失礼があってはならないそうなんだ。俺はその迷信を戯言だと思って馬鹿にしてた。
一度荒神様にお参りして馬鹿にしてた白蛇様には手を合わせずに帰宅して数日後、カフェのガレージの前が水路になってるだろ?其処の水路沿いに女房が豆を植えてやがるんだけどよ、朝、水やりに行くと真っ白な大蛇が水路の中にこうウネウネってな…泳いでやがったのよ。
で、水路から上がってガレージに入って行きやがる。きゃああなたああなんて女房に叫ばれちまってよお。
ウナギみてえに手で掴んでまな板に乗せて料理しちまおうなんて思ってガレージに向かったが、奴は雨樋沿いに母屋に移動済みだ、そこで庭のホース引っ張って来て水攻めにしてやったのよ。
「で、どうなったのです?」
近所の建築会社の事務員の子が飛んで来てよお、化物おおおおって叫ぶとシャベルでもって大蛇を千切りにしちゃったのよ。怖い子だろお?この話し、怖い事務員って怪談だからよ、ソコんとこ宜しく。
「で、事務員はどうなったのです」
死んだよ。死因は不明だけどよ。
この話し、怖い事務員の不審死って怪談だからよ、ソコんとこ宜しく。つまり、白蛇の祟りじゃないかな。
次は僕の白犬の御利益の御話しですね。高野山には狩場の犬と云う神様が居るのを御存知ですか?僕は数年前、ストレスから大腸ポリープをやったのですが、此れを白犬と月渚のオマジナイで治してしまいました。
ポリープになって直ぐ、夢を見ました。如来の四方を支柱に囲まれた寺院、支柱の上に置かれたナンバーズ3の当たりクジ、3?8番。目が覚めると、千代子さんが勤める神社の本殿の映像が見え千代子さんの声で358番だーーーと聞こえました。そこで358番を購入してみる事にしたのです。千代子さんの神社に行って御神籤を購入すると賭事は確実に買えとの事、買いましたよ、セットで購入しました。15万円当たりました。如来は高野山だと思ってお参りに行きました。その時だと記憶してます、荒神様の社の所で白犬を見たんです。
可愛らしい犬だったので撫でたくて犬を追いかけました。でも消えちゃったんです、社の裏で。不思議な山犬でしたね。それに消えたのは犬だけではありません、ポリープもです。白犬にお腹のポリープを喰われる夢を見ました。その後月渚にオマジナイをやってもらったりしてたら、ポリープも消えてしまったのです。
「千代子さんは旅団のメンバー入り決定だ」
旅団とは一体?晴明さんの言ってる事は分からない。
すると夢女さんが晴明さんに絡んだ。
「千代子さんは人形使いなのかい?」
「否、誰かの心の声なだけだ、伝説の憑依霊能力者ではない」
「でも、能力的には高けえテレパシーの持ち主。だからよ、メンバーで良いじゃねえか」
「だからそう言っている」
「他には、月渚、彼は腫瘍すら治せるからな」
「病気平癒用のメンバーだな」
「そして空手二段の草薙、剣道三段の文庫…」
「暴徒との遭遇用旅団メンバーか…」
旅団とは一体…?
「随分前からパンデミックは予言されていてオマジナイ使いの遺伝子は取り引きされていたと噂にはあるが、柳田の旅団結成が正にそれだ」
「和風カフェ百目鬼とは世を偲ぶ仮の姿、その実はパンデミックの後、文明の維持を目的として旅する旅団、百目鬼空想旅団。
そして何故怪談文庫なのか、旅団のメンバーには、怪なる奇なるモノ共が集められているからだ。
まずは奈良県は
斑鳩に向かえ。片道分の講釈は用意してある」
晴明さんは黙って封筒を差し出した。予算のようだ。
伊賀上野城の城主を勤めたのは筒井定次であり、筒井家に仕えた服部一族は有名な忍びの者だ。
その服部一族には番町屋敷に暮らす斑鳩一族もあった。ある時、斑鳩にある宝光寺から来た僧侶が屋敷前で倒れた、服部一族が僧侶の世話をしてやると、僧侶は「より多くの人々を助けてやって欲しい」と病気平癒のオマジナイのーー呪術ーーの遣り方を伝えて去った。
斑鳩トミはより多くの人々を助けるため無料で呪術を人々に施した。
そして、その血は、現在も斑鳩月渚に引き継がれているーーー。
以上が、オマジナイを継承する斑鳩家の概略であるーー。
一方、斑鳩一族と婚姻関係を結んだ文庫一族はと云うと、淡島神を信仰する一族だ。淡島神は人形供養の神様として有名な神様で、N津のA島も式鬼人形の供養の神様だった。それに淡島神は婦人病の神様としても有名だな。
その他は良く分からない一族だ。斑鳩一族は奈良県斑鳩でも淡島神信仰をしてた形跡がある、斑鳩一族と云えば住吉神社信仰が有名だ。住吉神社信仰と共に住吉神の妻でもある淡島神信仰をもしてた一族なのだろう。
住吉神と云えばオリオン座として有名だ。
「そー云えば梶浦山からみんなでオリオン座を見上げましたね」
「鳴釜の事件の時ね。中島美嘉さんのオリオンを聞きながら見上たのが忘れられない」
「僕にとって印象深いのはAimerのポラリスを聞きながら昴を見上げた事かな、昴が、鳴釜その物に思えてならなくてね」
「どうして?」
「昴の別名は北大将軍星、小説宇宙皇子においては役小角の別名でもある。小角は八咫烏の一族の象徴でもあり賀茂一族の代表的な偉人。賀茂小角と云えば宝光寺で修行した修験者であり、天狗の総領ともされてる。天狗、賀茂小角はポラリスであり、宝光寺、八咫烏、賀茂一族を結び付けるキーマンよ」
「ドゴン族が信仰するシリウスーー昴ーーの神様は宇宙船に乗った宇宙人だ、なんて話しもあったな。シリウス神が宇宙人なら鳴釜は宇宙船だと思わないか?」
夢女さんの話しが怪談から逸れた。
「天狗は宇宙船に乗った宇宙人ですか?」
それでも妖怪怪談には変わりないのか晴明さんは喰いついて来た。
「神隠しに遭った子供は、大抵、記憶を失っている」
「そういえば、僕もその昔、天狗山から飛んできた光を目撃した際に記憶の喪失を経験したな」
月渚が貴重な体験を語る。こんなUFO怪談もありますよ。自宅前で夕方から花火をしていた時の事、花火を共に楽しんでいた近所の主婦が近くの竹藪上空を指差した。振り向くと楕円形の光る物体が浮いていた。物体は一瞬間をおきシュッと横滑りに飛び去ってしまった。花火もたけなわの頃、僕は一度、自宅に入って時間を確認したーーすると六時頃だった。しかし楕円形の光る物体を目撃して、花火の後片付けをして自宅に入ると時計は九時を示していたーーー。
光る物体を目撃して、花火の後片付けをしただけで三時間も経つのは不自然だ。つまり幾分か記憶が欠落してると思うんだ。
「長期間の星空間航行に堪え得る体質も、君達斑鳩一族なら持っていると思うのだが……。だから次なる文明までのフィクサーとして斑鳩一族を選んだんだ」
「正規の決定権は?」
「柳田と晴明だろう。後はリーダー的な立ち位置であろう千代子さんだ」
「次の文明まで旅をする、、、と云うのは?どういう意味ですか?」
「次の文明が訪れるまで人類を存続させる、と云う意味だ。今人類は滅亡の窮地に立たされているからな」
「感染者一億人の事ですね」
「君達斑鳩一族の遺伝子から作った再生細胞は貴重な物だ。独特の振動を与える事で緑色に発光して再生力を増す。その再生力は病気に強い耐性を持ち食事も少量で済む。長期間の星空間航行には向いているだろう?」この旅ーー長期間の文明を待つ旅にも得手だろうーー。世界が荒廃してもーーー少量の食事しか必要とせず、病気には耐性があり感染を恐れず、無痛症によって暴徒も恐れず文明の維持に労力を費やせるーー。
正に適任だーーー。
次は何処に向かいますか?
静岡県へ。
西奈良村に結集した旅団のメンバーは、図書館にて給食を食べようとしていた。
「リンク西奈良って此処だろ?図書館じゃないか。こんな所で給食なんて出るのか?」
「菫さんの話しでは、ここで間違いないと…」
其処に芳しいハヤシライスの香が漂って来た。
「やや、この匂い、給食は此処で間違いありませんよ!」
眼鏡っ娘の日向ちゃんが率先して、リンク西奈良のロビーに立ち入ってみると次の間ある図書館の自動ドアに貼り紙が。
【本日のメニューはハヤシライスです】
「なんたる事だ!」
「どうしました?」
「ハヤシライスとはまた、カレーライスの偽物ですぞ。うん、うん、うん許さんぞう許さんぞう許さんぞうにぃ変身!パオオオ」
田所さんは神経質だ、偽物は絶対に許さない。
「最近は偽物が多くて困る」
理解を示したのは劇団長である田所さんの可愛い生徒、灯さんだ。アイドル劇団 黄泉津平坂49のセンターを努めている優等生だ。
「私はハヤシライスでも良いのです、お腹が減っているのです」
菫さんが二本の角を光らせて抗議する。光る度に空腹音がグウグウと鳴った。もう限界の様だ。
図書館に入ると、大きな寸胴から良い香りが。寸胴にはお玉がぶっささっている。
「なあんですってええええ!」
菫さんがお玉を持ったまま寸胴に貼られた貼り紙を見て叫んだ。
「どうしました!」
「1人…1人お玉一杯までですってええ!」
「日向もお玉二杯は欲しいのです」
給食制が始まって1ヶ月が経つが、まだ1度も満足だった事はない。この地域の住民は、ここリンク西奈良で給食が配給されるが広域をカバーしている為、持ち帰る際に冷めるのも早い。
この日、菫と灯が、自宅アパートに帰るとタッパーのハヤシライスは冷めて固形になっていた。
「灯ちゃん、旅団に入って1ヶ月、此処でのルームシェアも1ヶ月を向かえようとしているのです。記念に…」
「記念に?」
「手作りスイーツパラダイスをやるのです!」
日向、菫、灯、恋も、当然参加だ。歳上の田所、夢女、晴明、草薙、文庫と斑鳩は棄権だろう。
「豆腐を持ってるだけの小僧豆腐小僧に対抗してスイーツ小僧をやるのです」
日向は記念にコスプレすると訴えているのだ。
スイーツを持ってるだけで良いのだからそれは楽な盛り上げ方だろう。
それでは…と云う事で、各自和風カフェ百目鬼のメンバーらしく妖怪のコスプレをする事となった。しかしながら菫さんが鬼のコスプレをすると言ったらそれは「狡い楽過ぎる」と云う事となった。そして結局皆、式鬼人形としての属性に従う事となった。鬼は鬼、天狗は天狗、河童は河童といった具合だ。そして田所さんの提案で、リンク西奈良がカバーする広域の区域の住民をリンク西奈良二階のホールに集め、黄泉津平坂49のライブをやったらどうかと云う流れになった。
黄泉津平坂49ニューシングル「オカリナ少年カラスを呼んで飛ぶ」
さあ行きます!
49人の魂が1つになる時!歌う時とスイーツ食べる時!ピアノのメロディがながれる。バラードだ。
結局、ライブは成功だった。歌って踊れる妖怪人形少女達のパフォーマンスは受け入れてもらえたのだ。
妖怪コスプレとスイーツコスプレもだ。ロールケーキを持った鬼娘はチェキの人気も高く成功だった。ライブが終わると、黄泉津平坂49は次の町へ旅立って行った。
浜松市方面。
行く街は多いぞ。
何故ですの?
月渚の過去の怪奇体験を全て検証する為だーーー。
どうやって!?
全員で赴いて、全員の霊能力の現在のステージと適正を確認する、さあ、怪異と出逢いに旅に出よう。
夢女の妖術【ダイナー】調理する材料と器具が寸胴から出て来る妖術。
カパリンのシェフの妖術。触った物が【キュウリ味】になる。黄泉津平坂49のメンバーがスイーツを二人に注文してしまう。
スポンジがハヤシライス風味で出て来る。ハヤシライスよりはキュウリ風味ケーキの方がまし!寸胴に触った後ダイナーでケーキを取り出す。
リンク西奈良でのスイーツ対決に夢女とカパリンのシェフが巻き込まれた。
夢女の妖術は特異だ。触った寸胴から調理器具やら食材やらを取り出せる便利能力だ。この週末、夢女は寸胴から次々とお皿にロールケーキのスポンジを取り出した。しかしロールケーキのスポンジに塗り込まれているのはハヤシライスのソースだった。
「ハヤシライスは、いやあああああ」
菫が絶叫する。
「せめてカパリンの河童の妖術なら…」
「どんな妖術なの?」
「触った物がキュウリ味になるの。
「ハヤシソース味よりはキュウリ味の方が薄味でましじゃない?サラダ風味ねー」
「赤ベコの力も借りたらどう?牛乳から生クリームを作るの!妖術を使えば出来る筈よ」
「よし。それで妥協しましょう」
「ミーティング終わり」
「カパリンのシェフに寸胴に触れてもらって、夢女の妖術でケーキを取り出しましょう」
【キュウリ生クリーム!ひんやりとしたキュウリの風味に生クリームの甘味!夏のスイーツキュウリケーキ、カパリンスペシャル!】
かき氷と一緒に食べると最高だった
黄泉津平坂49
浜松市東区ーー天竜川沿いの廉価なアパート兼店舗のスイーツ店。抹茶パン、クランベリーデニシュ、イチゴクリームサンド。
此処月渚の伯母の家では数々の怪異が発生し数々のスイーツパンが発明されている。
確か…空海展、そんな様な企画展示会だったと思います。
そこで伯母は、空海のポスターをもらって帰って来ました。
死んだ飼い犬が懐いていた僧侶の霊ーー僧侶の霊と、死んだ飼い犬のお話しです。
アクトシティ浜松にてコンサートをする。
それが、私達の目的でした。浜松市に着くと、直ぐに向かったのがアクトシティ浜松でした。アクトシティ浜松にはホテルもあるので、宿泊は其処にする予定でした。でも僧侶の霊と飼い犬のお話しは月渚さんの親戚の家で聞いて欲しいって事で、パン屋さんをやってる伯母さんちにも向かったんです。
ある時から伯母さんちでは、僧侶が目撃される様になったんです。
もちろん僧侶何て住んで居ません。見ず知らずの僧侶です。僧侶はいつも例のポスターから出てきました。
ある日、晴明叔父さんが急性アルコール中毒で倒れました。
救急車で運ばれた、その頃、一階のパン屋店舗で寝ていた伯母さんは夢を見ていたそうです。
叔父さんが運ばれた先で治療を受けている夢です。
「晴明さん、しっかりして!」
そう聞こえて来る。そしてハッと目が覚めると、店舗の窓から飼い犬が覗き込んでいたそうです。
飼い犬は例の僧侶ーー空海さんと仲が良くなついてたそうです。その頃、飼い犬はとっくに死んでたのですが、空海さんの力で甦って叔父さんを救いに来たのだ、と伝説になっています。
アクトシティ浜松でのコンサートは大成功でした。
月渚さんちのお坊さんのポスターと死んだ飼い犬の位牌に手を合わせたおかげだと思います。コロナ感染者追悼企画でしたし。お坊さんの力が強い。お坊さんと力を合わせろコンサートですね。
レッツゴーお坊さんって曲は好評でしたし…。
私もレッツゴーお坊さん好きです。菫ちゃんがボーズになってるコラがあるじゃないですかあ、アレ、面白くて大好きです。 灯
僕も僕も!レッツゴーお坊さんは大好きだよ!
ダンスも好きな曲!
youtbeで踊ってみたー好評だたよー。
レッツゴーお坊さんかあ。好きだよお、、、、。 菫ちゃん人形に憑依してる時に聞くと、お祓いされたい気分になる。 尾道不由美
何で菫人形に憑依を? 斑鳩月渚
文庫瑠璃ちゃんの真似。 不由美
まさか…文庫をレイプしたのは…。 月渚
私じゃないよー。
文庫瑠璃ちゃんをレイプしたのは文庫瑠璃ちゃん本人だねー。 不由美
えっ!どーいう事ですか? 月渚
人工受精で、月渚さんのお子さんを授かる時に使った言い訳よ。
未来記によってパンデミックを事前に知っていた斑鳩一族はオマジナイの使い手を育てようとしていた。
この人工受精は、随分前から決まっていたんです。
不由美
そして菫ちゃんが産まれたのかーーー
オマジナイの使い手が欲しいーーーどっちにしろ、そう願望を抱く何者かがいた、そう云う事。
俺の許可を得ずに人工受精が行われた。それを隠す為、レイプ事件が捏造される所だった。
俺がその記憶を持ったのが15年前。菫も15歳と云う設定だ。
菫はーーオマジナイのエキスパートなの?
はい、特A級のーー
それは良かった何れにせよ命が救われるーーー
菫さん、灯さん、恋さんはオマジナイが得意で良いな、沢山の人を救える。
でも僕達は誰を救えば良いのだろう。
「文庫ちゃん、俺達はレッツゴーお坊さんでも歌って病気以外の人を救おうや」
「夢女さん…」
レッツゴーラッキー
レッツゴーハッピー
降り注ぐひかり
降り注ぐ太陽
反射する頭皮が眩しくて
光輪のよう
浜松市東区ーー天竜川沿いの廉価なアパート兼店舗のスイーツ店。抹茶パン、クランベリーデニシュ、イチゴクリームサンド。
此処月渚の伯母の家では数々の怪異が発生し数々のスイーツパンが発明されている。
確か…空海展、そんな様な企画展示会だったと思います。
そこで伯母は、空海のポスターをもらって帰って来ました。
死んだ飼い犬が懐いていた僧侶の霊ーー僧侶の霊と、死んだ飼い犬のお話しです。
アクトシティ浜松にてコンサートをする。
それが、私達の目的でした。浜松市に着くと、直ぐに向かったのがアクトシティ浜松でした。アクトシティ浜松にはホテルもあるので、宿泊は其処にする予定でした。でも僧侶の霊と飼い犬のお話しは月渚さんの親戚の家で聞いて欲しいって事で、パン屋さんをやってる伯母さんちにも向かったんです。
ある時から伯母さんちでは、僧侶が目撃される様になったんです。
もちろん僧侶何て住んで居ません。見ず知らずの僧侶です。僧侶はいつも例のポスターから出てきました。
ある日、晴明叔父さんが急性アルコール中毒で倒れました。
救急車で運ばれた、その頃、一階のパン屋店舗で寝ていた伯母さんは夢を見ていたそうです。
叔父さんが運ばれた先で治療を受けている夢です。
「晴明さん、しっかりして!」
そう聞こえて来る。そしてハッと目が覚めると、店舗の窓から飼い犬が覗き込んでいたそうです。
飼い犬は例の僧侶ーー空海さんと仲が良くなついてたそうです。その頃、飼い犬はとっくに死んでたのですが、空海さんの力で甦って叔父さんを救いに来たのだ、と伝説になっています。
アクトシティ浜松でのコンサートは大成功でした。
月渚さんちのお坊さんのポスターと死んだ飼い犬の位牌に手を合わせたおかげだと思います。コロナ感染者追悼企画でしたし。お坊さんの力が強い。お坊さんと力を合わせろコンサートですね。
レッツゴーお坊さんって曲は好評でしたし…。
私もレッツゴーお坊さん好きです。菫ちゃんがボーズになってるコラがあるじゃないですかあ、アレ、面白くて大好きです。 灯
僕も僕も!レッツゴーお坊さんは大好きだよ!
ダンスも好きな曲!
youtbeで踊ってみたー好評だたよー。
レッツゴーお坊さんかあ。好きだよお、、、、。 菫ちゃん人形に憑依してる時に聞くと、お祓いされたい気分になる。 尾道不由美
何で菫人形に憑依を? 斑鳩月渚
文庫瑠璃ちゃんの真似。 不由美
まさか…文庫手込めにしたのは…。 月渚
私じゃないよー。文庫瑠璃ちゃんを手込めにしたのは文庫瑠璃ちゃん本人だねー。 不由美
えっ!どーいう事ですか? 月渚
人工受精で、月渚さんのお子さんを授かる時に使った言い訳よ。
未来記によってパンデミックを事前に知っていた斑鳩一族はオマジナイの使い手を育てようとしていた。
この人工受精は、随分前から決まっていたんです。
不由美
そして菫ちゃんが産まれたのかーーー
オマジナイの使い手が欲しいーーーどっちにしろ、そう願望を抱く何者かがいた、そう云う事。
俺の許可を得ずに人工受精が行われた。それを隠す為、猥褻事件が捏造される所だった。
俺がその記憶を持ったのが15年前。菫も15歳と云う設定だ。
菫はーーオマジナイのエキスパートなの?
はい、特A級のーー
それは良かった何れにせよ命が救われるーーー
菫さん、灯さん、恋さんもオマジナイが得意。良いな、沢山の人を救える。
でも僕達は誰を救えば良いのだろう。
「文庫ちゃん、俺達はレッツゴーお坊さんでも歌って病気以外の人を救おうや」
「夢女さん…」
お掃除してたらお社にお尻りが触っちゃったって。
あの裏の家神様は怖い神様だからね。でも、空海さんのお陰で助かったのよ、夢女伯父さん、信心厚いから。
「夢女伯父さん、昨日、この曲聞いてたぜ。」
「レッツゴーお坊さん!これ、罰が当たらない勝因やろ」
「千代子さんもそう思う?」
妖怪黒いくねくね。
三日程前の事です。
伯母さんが厨房で洗い物の最中、背後に気配を感じたそうです。
それで、ふと自分の影を見ると、背後に背の高いひょろっとした黒い何かが居るーーー。
牡丹さんは蛇と化してる。この家の家神様ーーに昔、恋した男の影を見てるんだ。お坊さんはそう言います。牡丹の影は草薙と云う男に投影されている。夢女の弟だーーー。
それから数日後、伯父さんの夢女さんが朝起きて来ないので寝室に見に行くと、伯父さんの枕元に背の高いお坊さんが立っていて、寝顔を見詰めていたそうです。
夢の中、お坊さんは牡丹と家神様と蛇について語っていたそうです。
家神様は大変あの笹竹を気に入っていました。ええ、伯父さんが伐ってしまった笹竹です。竹は伐られるし、社に尻は触れるしで、大変怒ってらっしゃる、牡丹と共に祟る気だぞ。
翌日、夢女伯父さんは競輪場に行った帰りに自転車で転んで顔面を強打した。強打した際、片目は失明したと云う。
(牡丹人形の祟り)
牡丹人形は、包丁を体内に隠していたそうです。よく中国の雑技団がやるように、刃物を飲み込んだりするでしょう。あんな感じに体内に隠していたそうです。
どうやって取り込んだ刃物を体外に出すのかって?関節から先が増えるのですって。こう、肘先から先がにゅって伸びて増えるのです。ええ、刃物の肘先です。
家神様の社が、異世界に繋がってるーー
そう最初に気が付いたのは菫でした。
ある朝、家神様の社にお参りに行って社に包丁が供えられているのに気が付いたんです。驚きましたよ。包丁が供えられているなんて。これは、何故此処に置かれているのだろうと思案してると、社の中からすっと手が伸びて包丁を奪って行きました。
包丁を奪ったのは、牡丹さんの腕でした。ああ、牡丹さんの身体はあの社と繋がっていて彼処に隠しているのだな、と悟りました。包丁が消えると、悲鳴がしたんです。
夢女伯父さんの悲鳴でした。もしお坊さんの霊の言う通り牡丹さんが弟の草薙晴明さんの影を家神様に見ているなら、晴明さんが包丁を奪ったって事でしょうか?
「影を投影してると云うのはだな、自分の悪い一面を投影してると云う事なんだ。
家神様に自分の一面を見てるんだな。
コンプレックスだよ。兄の夢女を越えられない、弟のーーだ。
牡丹さんは尾道不由美さんと同一のステージに居る人格だったな。25歳の夢女の1人なのか?
そう、文庫から産まれた輪廻する夢女さんや千代子さんの1人ね」
牡丹さんが夢女を越えるにはどうすれば良いのかしら…。包丁を持って行ったそうだ。最強の怪談を、今も求めているのね。夢女(姉さん、或いは伯父さん、又或いは兄さん)さんである夢女を越えるために。
ーーー夢女さん、それはーーー越えられない壁だったのだ。
今度、家神様の社から、牡丹さんの腕を掴んでみるわ。牡丹さんが何を望んでるのか、見えて来ないから。
ーー文庫瑠璃、草薙晴明、は夢女を越える怪談を求め、牡丹さんは家神様を越える祟りーー怪異を求めている。牡丹さんは自分の起こす祟りに自信が無いのね、もっと恐ろしい怪異を起こしたいのよ。尾道さん達と同一の如く25歳のステージに居る文庫の人格が望むような。
怪談選手権をやろうと思うんだ。
牡丹や文庫ちゃんが成仏出来る様に、さ。
参加者は草薙、晴明、文庫瑠璃、斑鳩月渚、菫、その他の黄泉平坂49のメンバー、尾道不由美。誰もがぞくぞくする恐怖ストーリーをショートショートで創作して欲しい。牡丹を扱った怪談の場合は牡丹の手首の傷に因んだーー恐怖を。
その設定以外でも歓迎するぞ。文庫瑠璃全員でかかって来い!期待している。じゃ!
晴明は、さっそくこの選手権がある事を察して、包丁の肘先の牡丹を演じて俺を驚かした。気の利く奴だ。
「その程度じゃ夢さんが満足いかない事も知っています」
牡丹に自傷癖が現れたのは、去年の夏頃からだった。最初は傷口に目玉が見える。私は妖怪になったのーー。そんな戯言を抜かしていた。しかし、その内、傷口が喋る様になった。予言をーーするのだと云う。
「最初の戯言、傷口に目玉では、全く妖怪の百目鬼じゃあないか」
予言と言うのは?
パンデミックを予言していたわ。
一昨年の冬からコロナ災禍は知っていたのよ。
本当だろうか?
東日本大地震の時も、事前に予言を賜っていたの。
それだけに、中国でウイルスが感染拡大し始めた頃は驚きで一杯だったわ。
また、東日本大地震の時の様に予言が実現してしまうのだな…そう思うと恐怖で一杯でした。
やがて、感染者が一億人を越えると、「人類が滅亡する」と云う戯言が、本当の事の様に思えるーーーたまにそう云う事があるのよ。それが、夜も眠れない程に怖くてね…。
「尾道さん、初っぱなからぶっ飛ばしてんな」
「これも夢女さんの成仏を願っての物種です」
「縁起でもねえや、やめてくれよう」
「文庫ちゃんはどうですか?」
「自分は牡丹さんから、東日本大地震の時は事前にカタストロフがあると教えられてたので、信憑性があって怖いですね」
https://estar.jp/creator_tool/novels/25786737/episodes
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