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水は読む。
小さなかわいい手のひらを。
いっぱいに広げた指の間を、さらさらと落ちていく。
きっとこの子は、砂遊びが好きなんだな。
泥をいっぱい、腕までつけて帰ってきたから。
夢中になって、公園の砂場で遊んでいたのかな。
水は読む。
夕暮れの河川敷を走る自転車の少女を。
彼女はさっそうと、水はゆっくりと、同じ方向へ進んでいる。
彼女は部活帰りかな。
学校のジャージを来て、大きなエナメルバッグをかごに入れているから。
あんなに急いでいるのは、宿題をするため? それとも塾があるから?
水は読む。
痩せこけた黒い肌の男性を。
彼は汚れた水たまりを手ですくって、それを口に含む。
彼は何も食べたくないのかな。
胃の中があまりにも空っぽだったから。
そんなわけないよね、きっと。人間は何か食べたり飲んだりしないと生きられないもの。
水は読む。
人生を読む。
その人がどう生きてきたのか、水には読まれている。
だから、大切にしなきゃだめなんだ。
水も。
人生も。
水は読む。
小さくてかわいかった手のひらを。
今は大きくてしわがある指の間を、さらさらと落ちていく。
きっとこの人は。
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