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そして次の日を迎えた。いつも通り身支度を済ませて学校に向かう。いつもより歩くスピードが速い気がする。僕の中の僕が席替えでテンションが上がっているのだろうか、いつもより歩幅が広くなってしまい、すぐに学校についてしまった。教室に入ると田口が先に着いていた。田口は今日の席替えにかなり気合が入っているのだろう。僕が席に着くなり、田口は自分の席を立ち、僕の目の前に立ってものすごい早口で話しかけてきた。
「蓮、今日の席替え楽しみだな。昨日は席替えが楽しみすぎて夜しか寝れなかったよ。」
田口はいつもしょうもないボケをちょいちょい挟んでくる。いつもつまらないことばかり言ってくる。僕はそれにいつも対応しなければならない。その対応とはツッコミのことだ。
「寝るのは夜だけでいいんだよ。あと、席替えするのは午後のホームルームの時間だし。」
「ああそうだったわ。俺ってバカだな。」
「寝れないくらい楽しみな席替えってなんだよ。ただ自分の席の場所が替わるだけだろ?昨日は席なんてどこでもいいとか言ってたじゃん。」
「気が変わったんだよ。席の場所はめっちゃ大事だよ。やっぱ俺は一番後ろの窓側が良いな。」
「どうして?」
「先生からあんまり見えないだろ。だから机の下でスマホいじり放題じゃん。あと涼しいから。」
「一番後ろの角の席でスマホいじってたら余計に目立つだろ。なんか授業と関係ないことしてるやつは後ろの席のやつのほうがばれやすいらしいぞ。」
「ええ、そうなの。じゃあどこでもいいや。」
こいつは気が変わるのはかなり早いらしい。陽キャの女子のフリック入力並みに早い。
「もうそろそろ、朝のホームルームの時間だろ。自分の席戻れよ。」
「わかったよ。」
田口はしょんぼりしながら僕の後ろの自分の席に戻る。そんなに授業中にスマホに触りたかったのだろうか。授業中にスマホでできることなんてかなり限られていると思うが。田口は授業中に何をしたかったのだろう。そのことは席替えの時間にでも聞くことにしよう。
担任が教室に入ってきた。少しお疲れの顔だ。やっぱりゴールデンウィークの家族サービスは大変なんだろうか。
「先生、なんでそんなに疲れてるんですか?」
クラスの誰かが先生に聞いた。
「ゴールデンウィーク中はずっとバレー部の練習試合だったもんだからさ。」
うちの担任が部活の顧問を持っていることを初めて知った。部活の顧問は給料が発生しない。大会などの交通費だけはでるらしいのだが、雀の涙だ。だから、部活の顧問をやりたいという教員はあまりいない。まあ、僕には関係のないことだけど。
担任の雑談も終わり、朝のホームルームが始まった。担任が出席を確認していく。確認が終わるといつものように今日の連絡がある。
「今日の6時間目のホームルームは席替えするから。5時間目が終わったら、机の中片づけとくようにな。汚かったら移動めんどくさいからな。あと、まだゴールデンウィークの気分かもしれないけど2,3週間したらテストだから。そろそろ勉強始めたほうがいいぞ。ちゃんとしてる人はもう始めてるかもな。」
そうか、もうテストか。時間が経つのは早いな。まあ、テストぐらい前日からでも十分だろ。
大した連絡もなく朝のホームルームが終わった。するとまた後ろの席から田口が俺の目の前に現れた。
「やばいね。もうテストだって。授業全然聞いてないから全くわかんないわ。」
「テストなんて一週間前から勉強始めれば楽勝でしょ。だいたいは授業聞いてたらわかるし。」
「ええ、そんなこと言わないでさ、一緒に勉強しよ。売店でなんか奢るからさ。」
そんなに気持ち悪い言い方で勉強しようとか言われると断る気力がなくなってしまう。
「しょうがないな。じゃあ来週からね。」
「ありがと、蓮。」
チャイムが鳴りみんなが席に着く。席替えまでは遠い道のりである。
午前中の授業が終わり、昼休みになった。すぐに田口は僕に寄ってきた。
「売店行こうぜ。」
「いいよ。なんか奢ってくれるんでしょ?」
「ああ、そうだったわ。あんなこと言わなきゃよかった。」
田口は毎日売店に行く。2回目の昼ご飯を買いに行くからだ。田口はいつも2時間目の終わりに早弁をし、そして昼休みにも第2回戦が始まる。食事の回数だけで言えば、ボディビル選手とあまり変わらないが、内容は普通のデブだ。
ふたりで教室を出て売店に向かう。田口は売店でいつも弁当を買った。僕は特に欲しかったものもなかったので、オレンジジュースを買ってもらった。
「これで勉強教えてもらえるわ。」
勉強を教えてもらうための手間賃だったのか。だったらもっといいものを選んでおけばよかった。僕はちょっとだけ後悔した。
売店から教室に戻ると僕は自分の机を田口の机とくっつけた。僕と田口はいつも机を向かい合わせにして昼ご飯を食べている。僕はこの机の移動がめんどくさいのだが田口が一緒に食べようとしつこく言ってくるので渋々やっている。田口は弁当に入っていたハンバーグを口にいっぱい頬張って話しかけてきた。なんかもごもご言っている。
「なんだって?」
田口は頬張っていたハンバーグを飲み込む。
「次の授業終わったらやっと席替えだね。」
「そんなことかよ。それくらい飲み込んでから言えばいいじゃん。」
「だって楽しみなんだもん。だから早弁するんだ。」
「いつもしてるだろ。てか、次の授業移動教室だろ。めんどくさいな。」
「別にいいじゃん。それが終わったら席替えなんだし。」
「そんなに楽しみか。」
そんなことを話しながら昼ご飯を食べているとチャイムが鳴った。昼休みが終わった合図だ。
「次移動だから早く準備しろ。」
「ちょっと待ってよ。」
田口は慌てて授業の用意をする。そんなに急がなくても間に合うというのに。
「先行ってるぞ。」
田口は僕の後を走って追いかける。
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