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 4月6日、高校に入学してから早くも1年が経った。僕はもう高校2年生だ。北海道の4月はまだ多少雪も残ってるだろうし、桜も咲かない。あんまり進級した気持ちに浸ることができない高校2年生最初の朝だ。  まだ眠くて重たいカラダを無理やり起こしてカーテンを開け、外の光を浴び無理やりカラダを起こす。顔を洗おうと僕の部屋のドアを開けると、台所の方向から味噌汁の香りが俺の鼻を通過する。いいにおいだ。家の階段を下りて洗面所へ向かい、洗顔を済ませるとすぐに朝食の時間だ。美味しいご飯を食べ終えると学校の支度をしなければならない。まずはまた洗面所へ行き、歯を磨く。歯がキレイキレイになったところで部屋に戻り今日の授業の準備。そして制服に着替える。これが僕、静宮 蓮のモーニングルーティーンである。授業の準備ぐらい前日にすればいい話なんだが、僕はギリギリまでなにもしたくない人間だ。追い込まれてから力を発揮するタイプだと僕は思う。  今日は高校の始業式だ。絶対に遅刻は許されない。    学校につくと、玄関の窓に2年生のクラスの名簿が貼られてあって、そこにはたくさんの同級生が群がっていた。この学校では高校2年生の時にクラス替えがあって、それから卒業まで同じクラスになる。ここで変なクラスメイトばかりだったら人生終わりだ。  僕はなんとか自分のクラスを確認し、自分の教室へ向かう。教室に入るとクラスが変わったからか去年とはまた違う雰囲気が感じられる。少し早く学校に着いたため、自分のスマホをいじっていると後ろから声をかけられた。 「俺、田口啓介っていうんだ。よろしく。」 「よろしく。」 会話は続くことはなかった。というより僕が続けようとしなかった。やっぱり初対面の人と話すのは勇気がいる。僕はまたスマホをいじりはじめた。  朝のホームルームが始まり、始業式の流れの説明を受けた。いつも通りの校長の話と校歌斉唱をするだけ。またあのとてつもなく長い校長の話を聞かなくてはならない。これが高校2年生最初の試練なんだろうか。今日の校長は機嫌がよかったのか話の時間に座らせてくれた。いつもはずっと立っていてかなりしんどかった。校長の話は全く聞いていなかったがとりあえず始業式が終わってくれてよかった。やっとしばらくあの校長の話を聞かなくて済む。  式が終わって体育館から教室へ戻る。これから一応自己紹介の時間があるらしい。この学校は生徒もそんなに多くないし、高校生にもなって自己紹介をするのは恥ずかしい。  20分か30分ぐらいで自己紹介が終わった。みんな「吹奏楽部に入ってます。」とか「これから仲良くしてください。」とか普通の自己紹介しかしなかった。僕もごく普通の自己紹介をした。  これからこのメンバーで2年間過ごしていくことになる。僕は正直不安しかない。あんまり関わったことがない人たちが多いクラスだからだ。とりあえず、朝話しかけてくれた田口とは仲良くしよう。    5月5日、今日はゴールデンウィーク最終日の子供の日だ。北海道はこの時期になってやっと桜が見ごろになる。気温も温かくなりはじめて僕の気持ちもほっこりしてくる。  明日で進級してから1か月になる。ようやくクラスにもなじんできた気がする。特に学校初日の朝に話しかけてきた田口とは出席番号が前後だったこともあって一緒にいることが多くてよく話す仲になった。田口はまわりのクラスメイトとも仲が良いし、結構いいやつだ。その上にどうでもいいことをよく知ってて面白いメガネのデブだ。そんな田口と僕は意気投合し、学校がない日でもよくふたりで遊んだりしている。遊ぶといってもただふたりで雑談をするだけである。今日はふたりで桜で少し有名な公園に行く。  僕は時間ぎりぎりで到着する予定だったのだが、少し早く着いてしまった。僕は田口に早く着いたというLINEを送りスマホをみながら田口を待つことになった。 田口は予定よりも20分以上遅刻してきた。相当な距離を全力で走ってきたのか顔が真っ赤だ。メガネ外したらもう男梅になるんじゃないか。 「ごめん、蓮。めっちゃ寝坊した。」 「寝坊する時間ではないしょ。」 今日の集合時間は12時半だったが、現在の時刻は13時になろうとしていた。なにをしていたらこんな時間におきるのだろうか。 「ゲームしてて、気づいたら昼間の12時半だったわ。やたらと外が賑やかな気がしたからまさかなとは思ったけど、そのまさかだったわ。」 「寝落ちしたのはダサいわ。次の日に予定あるんだから早く寝ればいいじゃん。」 「もういいだろ。早く行こうぜ。」 公園の中に入ると一面が桜で広がっていた。僕の視界はピンク1色だった。 「そこらへんに咲いている桜はソメイヨシノなんだけど、ソメイヨシノはクローンらしいよ。」 「なんだよ。それ。」 「昔の人がいろんなところに植えたら日本全国に広がったらしいよ。」 「そういうことね。」 僕と田口は足をゆっくり進める。 「あの桜の木、満開だし空いてるからあそこ座ろうぜ。」 「いいね。」 満開の桜の木の下に座る。下から見る桜もこれもまた綺麗だ。 「明日席替えだな。」 「ああそうか。めっちゃ忘れてたわ。」 「相良さんの隣にならないかな。」 「あの、髪短い子?」 「うん。そう。あの子かわいくない?」 「まあ、僕は普通だと思うけど。」 今、話題に上がっている女の子は僕らと同じクラスの相良優希。結構顔が整っていてクラスの男子からはかなり人気だ。彼女はいつも同じクラスの古賀さんと一緒にいる。古賀さんはいつも少し騒がしいものの決して悪い子ではなさそうな雰囲気である。 「かわいいじゃんか。隣になれたらいいな。」 「席替えってどうやってするんだろうね。」 僕は心をウキウキさせている田口を無視して話を変えた。 「無視しないでよ。まあ席なんてどこでもいいけど。多分くじ引きとかでやるんじゃない。」 こんなどうでもいい話を満開の桜の下でしていたら、もう夕方の6時ごろである。 「もうそろそろ帰るべ。」 「飯でも行く?なんか美味しそうなとこ見つけたけど。」 「今日はやめとくわ。明日学校だし。また今度にしよ。」 僕と田口は公園を後にする。もうまわりは真っ暗だ。街灯がないと桜はよく見えないくらい日が暮れている。 「じゃあまた明日。」 「じゃあね。」  僕は帰宅して、夕飯を食べた後、風呂に入る。この風呂の時間が一日が終わったということをカラダに教えている気がする。風呂から出て部屋に戻った。部屋のベッドの上でスマホをいじりはじめたとき、今日話した席替えの話のことを思い出した。さっきは、相良さんのことを普通じゃないとか言ってたけど実際はそんなことはないと思っている。見た目は見た通りにきれいだ。けど、全く話したことのない人を僕はかわいいとは言えない。その人の性格がよくわからないからだ。  どこの席になっても授業の内容は変わらない。だからあまり気にしないことにした。そして僕は部屋の電気を消して布団に入って寝た。  
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