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蓮、倒れる ①
『真司さん!!チーフが……、チーフが倒れました!!』
大山からの電話を受けた時、真司はちょうど客との商談がまとまった時だった。
それからの事は真司はよく覚えおらず、気がつけばタクシーに乗り、大山から聞いた病院へ向かっていた。
車内でジタバタしてもしかたない。
それは真司も重々承知していたが、居ても立っても居られない。
大山の話ではいつもより蓮の顔色が悪く、蓮には珍しくミスも続いたそうだ。最近忙しく、あまり会社で昼食を取ることもなく働き詰でもあったとも。
そんな中、蓮が椅子から立ち上がろうとした時、蓮はそのまま倒れその後も意識がなく、救急車で病院に運ばれたのだった。
蓮、蓮、蓮……。
真司は心の中で蓮の名前を呼び続ける。
どうして俺は何もしなかったんだ!!
最近、蓮の様子がおかしかった。
常に体温が高く、体に熱がこもっているようだったし、明らかに食事の量も減った。
真司には直接言わなかったが、目眩もあったのだろう。ふらつく蓮の姿を真司は何度も見ていた。
その都度真司が蓮に『大丈夫?』と声をかけても、蓮から返ってくる言葉はいつも同じ。
『大丈夫』だと。
どうしてその時、もっと蓮の話を聞かなかったんだ!
蓮は弱音を吐かないって、俺が1番知ってるじゃないか!!
「くそっ…!」
社内で真司は自分に対しての、苛立ちを隠しきれなかった。
後悔してもしきれない。
もしも蓮に何かあったら……。
真司は奥歯を噛み締めながら1分1秒でも早く、病院に着くように祈った。
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