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真司と蓮 ① 〈第1章〉
真司は走った。
季節は秋も深まった10月。
昼間は穏やかで過ごしやすい気候だが、夜になるとやはり冷える。
そのためいつもは真司もスーツの上にトレンチコートを羽織っているが、今日は羽織ってはいない。
走るのに邪魔になるためコートを腕に引っ掛けると脇目もふらず、真司は最寄駅を降りてから、蓮が待つ2人のマンションへと止まることなく走っり、部屋の前に着く頃には汗がにじみ、息もあがっていた。
一度大きく深呼吸をし、真司が玄関のドアをあけると、
「っつ!!」
むせかえるような甘い香りが部屋中に充満し、一瞬にして真司の体を飲み込む。
こんなに凄いヒートは初めてだ。
真司は急いで蓮がいるであろう寝室のドアをあけと、ベッドの上に真司のコートやスーツ、シャツにネクタイ…。
ありとあらゆる真司の服を大量に引っ張り出し、その中に埋もれるようにした蓮が、潤んだ瞳に熱い息を吐き、熱った身体が苦しいと言わんばかりに真司を見つめた。
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