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 ジュリとの奇妙な同居生活がそろそろ一ヵ月になろうとしていた。 「なぁ。進級課題は大丈夫か?」  三月も後半に入った祝日の夜。俺はクローゼットの中で本と睨めっこをするジュリに声を掛けた。 「キラさん」と目に涙を溜めて、ジュリが顔を上げた。見るからに思い詰めた様子だ。 「はぁ? 明日?」  無意識に表情が固まった。例の締め切りを明日と聞かされ、当の本人でもない俺が狼狽える。  夏休み最終日になっても宿題が終わらない、当時の自分を見ているようだ。 「さすがにまずいんじゃないのか?」  ジュリは無言で魔術書をめくりながら洟をすする。 「今日と明日は俺も休みだし、一緒に探してやりたいけど……この文字じゃ読めないしな」  彼女に聞いたところ、魔術書に使われているのはエノク文字というらしい。  それなら、と呟き、ジュリが本に人差し指を当てた。英単語を発するように呪文を唱えると、解読不可能な文字はたちまち日本語になった。 「……すげぇ」  もはや脱帽の思いだ。
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