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そんなこんながありながら、試験の日がやってきた。
辺境の町まで行って装備のチェック、地形の確認をした後、魔物がすみついている森へ向かう。
が、現地周辺の様子がおかしい。
「何かへんだな」
「魔物が多すぎるわね」
森の前に行く前に、怪しい空気があった。
普段は魔物がいないような、人通りが多い街道にも魔物がうろついていたのだ。
いつもとは違う状況だったために試験は一時中断。
僕達学生は、引率の教師と共に最寄りの町までも戻った。
その数時間後、悪い予感が的中してしまったようだ。
「魔物のスタンピートが発生したらしい」
と、引率の教師が、町に出回っていた情報を教えてくれる。
スタンピートが発生すると、理性を失った魔物たちがめちゃくちゃに暴れまわって、人や動物を襲う。
発生の予兆を掴んで事前に、数を減らしておけば被害を抑えられるが、今回はそうでなかったらしい。
何でも、呪術犯罪者の潜伏とか事件のせいで、手が回らなかったらしい。
今もその事件のせいで、頼りになる騎士や勇者はみんなではらってしまっている。
今外に出るのは危ない。
という事で僕達は町の中にとじこめられてしまった。
「こんな時に、勇者様がいてくれたらね」
「特別な遺物に選ばれないと勇者にはなれないんだろ? そんな珍しい人が、俺達のような小さな町に来てくれるわけないじゃないか」
「魔物の数多いんだろう? この町はどうなってしまうんだろう」
町の人達はみな不安げだ。
三日間、町の中に足止めされた僕達は、なぜか町の自警団の人と共に魔物と戦う事になった。
町はすでに魔物の群れに取り囲まれている。
最初に乗り気になったのは、もちろんうちの馬鹿とお嬢様。
「俺達が戦わなかったら、こいつら中にはいってきちまうんだろ」
「そうよ。だって放っておけないもの」
お人よしの幼馴染達は、それでもいいだろうけど、巻き込まれる僕の身にもなれよ。
肩を並べて敵と戦ってみたものの、かなりやっかいな連中だと分かった。
体力のない僕は早々に、後方支援の方へひっこませてもらう。
「おい、こいつらぜんぜん減らないじゃないか。尋常じゃない数だぞ」
押し寄せる魔物は次から次へと補充される。
切っても切っても、まるで減らない
きりがなかった。
町の外にひしめきあう者達の姿をみて、何でこんな幼馴染達につきあってるんだろうって後悔したくなかった。
けど、それば僕だけじゃない。
「くそっ、何で騎士たちは早くきてくれないんだよ」
「俺達まだ学生だろ」
「こんな命がけの初戦があってたまるか」
なんて叫びきながら、クラスメイト達もひいこら言って戦っている。
なんだかんだでこいつらも相当なお人よしだからな。
幼馴染のあいつらに付き合って、町を守る事になったのだ。
きっと馬鹿とお嬢様のお人よしが移ってしまったのだ。
感染性のそれにかかってしまったのが運の尽きだと思う。
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