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──気が付いたら、自分が別の存在になっていた。
そんな話は度々目にする。昔、読書感想文の為に読んだ、中島敦の『山月記』とか、フランツ・カフカの『変身』みたいなのがいい例だ。
──で、自分、もというちの場合はというとだ。鏡を見ても、自分は虎にも芋虫にもなっていない。
映るのはかれこれ十八年程付き合いのある、うちこと戌井古楓のいつもの面だ。
…だが、今日はいつもと違う。メガネを掛けていないから前がボヤけて見えるとか、そんな次元の話ではない。
「フッフッフ……」
如何にも悪巧みしてます、という不敵な笑みで口元が歪む。
「──アーッハッハッハッハーッ!」
早朝の静けさを蹴散らすように、悪魔の笑いが木霊する。
直後、バカ笑いする右頬目掛け、自らのストレートが叩き込まれるのだった。
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