序章①

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序章①

「やっぱりそうだ、ようやく見つけたよ、僕を遥か西へと連れて行ってくれないかい?」  私はある日突然いきなり見知らぬ少年から声を掛けられた。  ナンパだろうか?だとしたら少しは嬉しい、生まれて21年そんなこととは無縁の生活をしていたのだから。  しかし、残念ながら相手はどうサバを読んでも、10才程度、そんな事はないだろう。  西?西って九州に行くってこと?なんのことだろうか? 「迷子?名前とか住所わかる?」 「迷子だったら君じゃなく、迷わず交番に行ってるさ、10才程度の子供でもそれくらいの知識と行動力くらいはあるさ」  意外と口が達者だ。 「う~ん、僕と違ってタイムラグがあるのか…となると…」 少年は深く考え始めた。 「まぁしょうがない、もう時間がないんだよお姉さん、意味がわからないだろうけど君は僕を遥か西へと連れて行かないといけない」 少年は私の腕を強く握りしめた。 「だから、何の話なのよ、こっちは就活で忙しいの!子供にかまってる暇なんて…だいたい西って九州に行きたいの⁉」 少年はニッコリと笑い答えた。 「決まってるじゃないか、西と言ったら天竺に行くのさ!」 この日、この瞬間私の日常は終わりを迎えた気がした。
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