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「妹が……クラスメイトと付き合ってんのかあ」
一切、麻衣本人の口から聞いたこともなければ、真司からもない。
どっちが言い出したかは知らないが、下手に秀樹に教えない方がいいと判断したのだろう。
それで正解だと、秀樹は思う。
「そりゃ、こんなに落ち込むからなあ」
足取りは重い。
本当は服とかゲームとか見にいく予定だったが、ハンバーガーだけ食べて帰りたくなった。
ふと、誰かの視線を感じる。
駅前のロータリーでタクシーが客待ちをしていた。
運転席に座っている人物を見ると、何故か秀樹は脱力する。
ため息をつきながら、そのタクシーに近づいた。
「おひさしぶり、ですね」
自動で開いたドアに乗り込み、声をかける。
バックミラー越しに、何度も見た顔が見えた。
「ゲームソウルは、うまく使えているかい?」
「最近は家に仕舞い込んでますよ……山田さん」
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