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先程、レジの前に飾られていたものと全く同じものだ。
手にしただけで、小さい頃の記憶が蘇り、何か宝物を得たかのような感覚で満たされる。
だがハタと気づいた。
「これ、いいんですか? 非売品とかじゃ……」
最後の方は口籠るように小さくなる。
本音は、何も咎められずに持ち帰りたいのだ。
そんな秀樹の気持ちを見越しているのかいないのか、店員はゆっくり頷いた。
「いいんだよ。どのみち、この店はもう閉めるところだからね」
「えっ」
言われて気づき、周囲を見渡す。
店のドアの横に、閉店セールと書かれたのぼりが出ていた。
旗の部分が少し折り畳まれていて、文字が見えづらい。
そのため、店の発見にワクワクしていた秀樹の目には入らず、気づかなかったのだろう。
「残念ですね。こんなにいいゲームをいっぱい扱ってるのに」
秀樹は心の底からそう言った。
こんなにフランクに新旧問わず大量のゲームを扱ってくれる店など、最近見たことがない。
デパートのゲーム売り場では味わえない、何というか……ライブ感がある。
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