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「まあ、時代が時代だからね。こういったゲームだけを扱っていても、やっていけないところが多い」
店員の口調は寂しさが滲み出ていた。
「はい。スマホのゲームとか、どんどん主流になってきてますもんね」
「そうそう。それに、最近はわざわざ店まで買いに来なくても、ダウンロードでゲームが買える。便利になったといえば聞こえがいいが……」
最後まで言わず、お爺さんはニコリと笑って手を振った。
秀樹はその仕草に促されるように、自転車に跨る。
あのまま話を続けていたら、秀樹の目もしおしおになるところだった。
それだけ、ゲームショップに対する愛は、秀樹も熱い。
「じゃあ……」
「ああ。会えて良かったよ」
お爺さん店員は笑っていた。
本当に、秀樹と会えて嬉しがっている、そんな笑顔。
なぜそんなに良くしてくれるのか、理由は分からないが。
ゲーム愛が伝わったのかもしれない。
秀樹はペコリと頭を下げると、二つ目の紙袋はハンドルに引っ掛ける。
店員の視線を背中に感じつつ、夕日の中を走り出した。
荷物が荷物なため、左右にフラフラ揺れながら、だが。
「オレがちっちゃかった時は、まだまだあんな店があったんだけどな……」
口の中で、誰にともなくつぶやく。
しばらく物思いにふけながら自転車を漕いでいると、やがて一つのマンションにたどり着いた。
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