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大都会の一角。
ほとんどの人が通らない、絶妙な場所がある。
摩天楼とも言えるビル群。
その陰の一つに、1人の男性が佇んでいた。
「やってやる……」
何か、思い詰めたかのような呟きが口から漏れる。
歯を食いしばり、赤く歪んだ顔。
そこには憎しみ、憎しみ、そして怒りが。
晴天を突き破るかのように空高く伸びたビルを一望すると。
顔をブンと垂れ、唾を吐き捨てた。
「思い知らせてやる」
右手を持ち上げる。
そして、スッとビルの一角に向ける。
何かの武器であるかのように。
だが背後に、誰かの気配を感じた。
「……烏丸、ですね」
聞こえてきたのは若い女性の声。
ハープの音色のような、心地よい響きだ。
反射的に、烏丸と呼ばれた男は振り向いた。
視線の先にいたのはセーラー服の人影。
その目は全体が青みがかっている。
街を行く10人が10人振り返るだろう、とても美しい少女だった。
「あなたに、話がありま……」
少女は話し合いをしようとしたのだろう。
だが、叶わなかった。
「黙れ」
男の目がオレンジ色に光る。
右手に生じる、熱い空気の揺らめき。
そして、巨大な火の玉が男の右手から放たれた。
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