決着のカタチ

19/20
前へ
/521ページ
次へ
「かっ、は」 胴体の真ん中に、拳を撃ち込まれた陸。 拳と言っても、握りこんだ指の先が触れた程度だが、効果はあった。 「うっ……」 力なく倒れた陸の背中から、地面が透けて見える。 触媒で強化された真司のエネルギーが触れたことで、胴体の真ん中が分解されていた。 「はあっ……はあっ……」 真司は荒い息を吐きながらも、陸を静かに見下ろす。 だが、まだ両目の光は消えていない。 能力全開の状態のままだ。 新しい武器である、グローブに纏ったエネルギーも消していない。 「ちく……しょ」 陸は今にも消えそうな声でつぶやいた。 「結局、お前には負けるのかよ……」 「そうだ、な」 真司は跪いた。 拳を握り、腕を引いて構える。 「初めは母親を助けるために、稼ぐためにやろうと思って始めたボクシングだった」 真司が重い声で語る。 「は……昔話か」 「やってるうちに、楽しくなってきた。陸。お前とも、高め合ってたはずだ」
/521ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加