44人が本棚に入れています
本棚に追加
「かっ、は」
胴体の真ん中に、拳を撃ち込まれた陸。
拳と言っても、握りこんだ指の先が触れた程度だが、効果はあった。
「うっ……」
力なく倒れた陸の背中から、地面が透けて見える。
触媒で強化された真司のエネルギーが触れたことで、胴体の真ん中が分解されていた。
「はあっ……はあっ……」
真司は荒い息を吐きながらも、陸を静かに見下ろす。
だが、まだ両目の光は消えていない。
能力全開の状態のままだ。
新しい武器である、グローブに纏ったエネルギーも消していない。
「ちく……しょ」
陸は今にも消えそうな声でつぶやいた。
「結局、お前には負けるのかよ……」
「そうだ、な」
真司は跪いた。
拳を握り、腕を引いて構える。
「初めは母親を助けるために、稼ぐためにやろうと思って始めたボクシングだった」
真司が重い声で語る。
「は……昔話か」
「やってるうちに、楽しくなってきた。陸。お前とも、高め合ってたはずだ」
最初のコメントを投稿しよう!