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真司が左手で陸の肩を掴む。
叩き込もうとする拳の、狙いを外さないように。
「試合で勝ち進んでいくオレの成績に嫉妬したお前は、暴走族と、能力者の鬼頭も使って、オレをリンチしようとした」
「だから……なんだよ」
「その日、オレは自分の能力に気づいた。こんなの持っていたら、ボクシングで力を抑えて戦うなんて、虚しくなっちまった」
すうっと真司が息を吸う。
「許さねえよ、風見陸」
真司の拳が、陸の頭部を捉えた。
分解された肉体が舞い上がり、無数のチリとなって風に吹かれていく。
真司の体から、能力者の光が全て消え去った。
地面に手をつき、項垂れる。
かつての友人の亡骸を前に、真司は一粒だけ涙を垂らした。
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