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秀樹は壁に張り付いていた。
少しだけ顔を出して、ターゲットの様子を伺う。
こちらを向いた気がして、慌てて首を引っ込めた。
「ちくしょう……なんで」
なんであいつが……麻衣と。
たまたま買い物に一人出かけた休日。
妹の麻衣がビルの前を歩いているのが見えた。
だが、妹は1人ではない。
隣に歩いている男性には、嫌というほど既視感があった。
「そりゃあ、そういう可能性もあるけど……」
再び首だけを出して、麻衣たちの様子を窺う。
心底楽しそうな笑顔を見せる麻衣の隣で歩いているのは、秀樹の隣の席の男子。
「お前かよ、真司いいい」
細マッチョのイケメン、的場真司。
麻衣に腕に抱きつかれながらも、落ち着いた様子でエスコートしている。
曲がり角に消えるまで彼らを見送っていた秀樹だが、やがてトボトボと歩き出した。
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