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「……あの、あなたのお名前は?」
ダメ元で秀樹は尋ねてみる。
だが、山田は前部座席のシートの裏に貼られたプレートを叩いて見せた。
ありきたりの定型文で、こう記載されている。
『本日のドライバーは、山田が担当いたします』
ため息をついて、秀樹はタクシーの外に出る。
山田が本名ではない、あるいは素性を表すものではないことは確かだ。
まだ正体を明かすタイミングではないと、山田は言いたいのかもしれない。
「あ、待ちなさい」
立ち去ろうとする秀樹の背中に声がかけられる。
山田が助手席の窓を開けて、こちらに顔を向けていた。
「今回解放された力は、主人公以外のゲームのキャラクターにも変身できることだ」
先ほど指が触れた時に、新たな力を与えてくれたのだろう。
秀樹は頭を下げると踵を返す。
そしてハンバーガー屋のドアの前に立った。
だがドアを開けようとしたところで、やはり山田に追求したい気持ちに駆られる。
「あの」
振り向いて、声をかける。
だが山田の乗るタクシーは既に消えていた。
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