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出てきたのは、ゲーム屋のロゴが入ったエプロンを身につけた男性。
かなり歳がいっていると思われる、白髪のお爺さんだった。
「お買い上げで?」
分厚いメガネの奥から、秀樹を窺うかのようにじっと見つめてくる。
秀樹は頷いた。
よく見ると、昔は美青年だったのかもしれない。
このお爺さん店員のメガネと口髭に隠された顔は、まさに銀幕俳優といえるほど端正だ。
ピッ、ピッと、バーコードを読み取る音が続く。
「おじさん」
「ん?」
「一人で黙々とプレイするファミコンって、ファミリーのコンピュータと言えますか?」
「ぼっちコンかな」
「ひとりコンパみたいですね」
悲しみが増した。
それくらいで店員との会話は途切れ、秀樹は所在なさげに辺りを見回した。
「あっ」
ふと、お爺さん店員の立つレジの背後に、飾られるように陳列されたパッケージが目に入った。
「それも、売り物ですか?」
秀樹の目線を追って、店員は背後のパッケージを振り返って見た。
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