二.

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二.

 なんだかうるさい。  ゆっくり目を開けると、高校時代に買った目覚まし時計に目を向けた。二十二時になろうとしている。  机の上で、携帯のバイブレーションが鳴り響いていた。  誰だろう……。  修は、照明のスイッチを入れてベットから起きあがると、携帯を手に取り画面を確認した。  中学時代からの友人である、(りょう)からの着信だった。 「亮、久しぶり!!」  修は躊躇うことなく、その電話に出た。 「び、びっくりしたな。おい、修。そんなに俺と話したかったのか?」 「えっ? うなわけねぇだろー」  笑ってごまかしたが、図星だった。 「あれ? 今、日本?」  よく耳にするコンビニの入店音が聞こえたのである。 「ばれちゃった? ……まあな。しばらく実家にいるよ」 「そっか……」  亮は高校を卒業すると同時に、料理人になるため、海外へ出ていった。 「修、別に気を遣わなくていいよ。俺、まだあきらめたわけじゃないからさ」 「……なんかごめん」  ここで、何かいい言葉はないかと思考を巡らしたが、思いつかなかった。 「ところで修は、今、何してるの?」  正直に、転職活動をしていることや、面接で失敗した話、現状どこも引っかからず苦しんでいる話をした。  うんうんと聞いていた亮は、ケラケラと笑ったり、失礼なことも言ってきたが、話していて心がほっとする自分がいた。 「みんな元気にしてるのかな?」  ふと、中学時代の同級生が気になった。 「元気にしてるよ、きっと」  亮とは、運よく三年間同じクラスで、馬鹿なこともいっぱいしてきた。  修が、中学時代の話を切り出したおかげで、その当時の担任の先生や面白かったことなど、急に思い出話に変わった。 「そういえば、井澗(いたに)って元気にしてるのかな?」  井澗とは、気さくで面白く、運動万能であり、いわゆる女子からモテるイケメンだった。体育祭のメインであるクラス別対抗リレーでは、いつもアンカー。彼にバトンが渡るとき、例え最下位だったとしても、あっという間に前を走る相手を追い抜かして、先頭でゴールテープを切るのである。  多分、各担任の先生達は、毎年のクラス分けには相当頭を悩ましていたと思う。井澗の抜群の運動神経を考慮して、クラスのバランスを考えなければならなかったからだ。 「井澗は、ボクシングやってるみたいよ」 「えっ?」 「一週間前に、こっちに帰ってきたんだけど、ばったり井澗に会ってさ。その顔が腫れてて、どうしたのって。そこで初めて知ったわけなんだ」 「そうなんだ」  井澗の運動神経から考えると、当然何らかのスポーツをやっていると容易に想像ができた。だが、さすがにボクシングだとは思わなかった。 「ボクシング、す、すげぇな!」 「去り際に、ファイティングポーズをしながら、俺は世界一になるまであきらめないって言ってたよ!」  亮は興奮しているようだった。  なんとなく、二人の存在が遠くに感じられた。
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