夢のような日々

4

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　薄紅の花びらが舞うキャンパス。
　僕は正門を抜けると最初に見える桜の木の下にいた。少し古びた白木でできたベンチに座っていた。

　春のうららかな陽気のもとで座っていると、いつのまにか睡魔に僕は襲われる。うつらうつらと微睡の中に落ちていきそうだった。
　心地よい春の誘(いざな)いに、僕の瞼は重くなる。起きなければ、頭の中ではそう思うけれど、僕はこの睡魔に逆らうことができそうもなかった。もうこの心地よさに落ちていくしかないのか。

　しかし、その春の誘いは、ふいに終わりを告げた。

　僕の頬に、何かが触れた。
　氷にでも触れたような、冷たい何か。

　驚いた僕の目は一瞬にして見開かれ、文字通り飛び上がりそうになって顔を上げた。
　いまのは何だ――？

　答えは、僕の目の前にあった。
　僕の前には、髪の長い女性が立っていた。
　桜舞う春風の中で、その人の長い髪が揺れていた。

　これは、夢じゃない。

「ちゃんと、頑張ったんだね。広瀬」

　そう言って微笑みながら僕の頬に触れていたのは、いつも手の冷たいあの人だった。