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ヴィネという者は、深々と頭を下げた。
ヴィネは小学生低学年ほどの身長で、140㎝ないように見える。ショートの青い髪に、金色の瞳。そして……服の外から透けて見える、背中に生えた小さな翼。
けれど、俺はそれについて、ヴィネに訊ねたりはしなかった。この世界は何でもありだと、先ほど分かったからだ。
「ヴィネか。良い名だな」
俺の言葉にヴィネは嬉しそうに笑った。
どうやら、俺が100年前の魔王ではないと、知っているみたいだ。
説明する手間が省けた。
「俺の名前は……知っているとは思うが、一応名乗っておくよ。俺は佑夜。橘佑夜だ。不甲斐ない点が多いと思うし、迷惑をかけてしまうだろうけれど、仲良くしてもらえると嬉しい」
「も、もちろんでございます。主を支えるのが、私共の指名です」
「ははは。そう言ってくれて助かる」
俺は笑った。
けれど、主という呼び方は、特別扱いをされているようで、少し嫌な気分だ。
「すまない、主という呼び方を変えることはできないか? 特別扱いされているような気分になって、その……」
「主が望むのであれば。それでは、何とお呼びすればよろしいですか?」
「ーー名前呼びがいいなぁ」
ぽっと出た言葉がそれだった。
ヴィネはその言葉に、大きく目を見開いた。
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