目が覚めたら魔王城

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 元々いた世界で、言われ慣れている呼び方の方が、俺は嬉しいし、何よりすぐに反応ができる。  けれど、ヴィネは目を見開いたまま、ずっと黙ってしまっている。  無茶を言ってしまったと、俺は反省した。 そりゃあそうだ、と冷静に考えれば分かる。  今まで、100年前まで魔王のことを主と呼んでいたのなら、違和感を覚えるのも無理はない。  人間にとって100年がとてつもない年月だとしても、魔族からしたら、そうでもないのだろう。戸惑って当然。 「む、難しそうなら別にいいんだ。主って呼ばれても、反応はできるし、それにーー」 「ユーヤ……様」  俺の言葉を遮って、小さく呟かれたその言葉を、俺は聞き逃さなかった。  顔を赤くするヴィネに、俺は思わず笑みを浮かべた。
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