5人が本棚に入れています
本棚に追加
「さて。ヴィネたちの部屋も出来たことだし、俺はそろそろ寝ようかな……」
俺は、案内された部屋のベッドにダイブした。
ふかふかしていて気持ちが良い。
この勢いならすぐに眠れそうだ。
睡眠の神に誘われ、すぅと目を閉じたその時、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「マジか……」
思わず声に出た。
寝ようと思っていたのに……!
そう思いながら「どうぞ?」と言った。
俺の声から数秒後、その扉が開いた。
「主よ、例の人間を地下に……と、機嫌が悪いですね? 何かありましたでしょうか?」
全て分かっていながら訊ねるレンに「いや、何でもないさ」と見栄を張る。
「それで、少女はまだ眠っているのか?」
「はい、ぐっすりと。あれは朝まで起きないでしょう」
「そうか。ご苦労だった。レンも今日は疲れただろう。今日はゆっくりと休め」
「…………」
レンは驚いた表情をみせた。
それはまるで、今までそんな言葉をかけられてこなかった者が出す表情だった。
レンはしばらく黙っていた。
それから言った。
「ありがとうございます、主よ。それでは、私も今日のところは、この辺で失礼致します」
「ああ。ゆっくり休め」
「それでは」
レンはそのまま、部屋を出て行った。
出ていくその姿を見送った後、ぼふんとベッドにもう一度ダイブする。この先のことを考えなくてはならない。少女のことをこれからどうするのか、考える必要がある。
それでも、今の俺にはそんな余力はなく、それを考えるだけの頭も働いていなかった。
「とりあえず寝よう……」
今日は色々なことがありすぎた。
体の疲れが……今頃……
俺は深い眠りへと誘われた。
それから俺は、規則正しい寝息を立て始めたのだった。
部屋から出たレンはつぶやいた。
「人間という生き物は、不思議な者が多すぎる。けれど、だからこそ……魔王に相応しい」
レンの口から「く、くく……くくく」と、乾いた笑い声が溢れた。
その言葉が、誰かの耳に届くことはなかった。誰にもーー
最初のコメントを投稿しよう!