目が覚めたら魔王城

16/17
前へ
/25ページ
次へ
 翌日、俺はレンと共に少女の下へと足を運んだ。少女はまだ眠っていた。地下室とは思えないほど、行き届いた掃除。  ふかふかのベッドに、心地良さそうな布団。俺は思わずダイブしたい衝動に駆られた。  けれど、今はそんなことをしている場合ではない。場合ではないのだ……  欲に負けてしまいそうなところを抑え、俺は共に来ていたレンと向き合う。 「それで、この世界についてと今後について、ここで話す……ということ間違いないか?」 「ええ。その通りでございます」 「何故わざわざこの場所で?」 「城の者たちが、人間への対応と、天界の者の対応で大忙しだからです。この人間を見張る者がいない。主と私しか」 「なるほど、監視のため……か」  用意周到だなと俺は思う。  けれど、レンはそんな俺に笑った。 「主も、初めから分かっていたんじゃないのですか?」 「まあな」  俺はレンの言葉に、素直に頷いた。  いや、普通に考えて分かるだろう。  何の理由があって、人間の魔王とその魔王の右腕が、2人仲良く地下室へ行くのか。  地下室で仲良くお話?  そんなことがあるはずがない。  仲良くお話するにしても、地下室にはこないだろう。いや、誰にも聞かれたくないことならば、有り得るかもしれないが。そこに少女がいるとなれば、内緒話もできない。 「まあ、どんな理由でもいいが。さて。話を始めるとしようか」 「ええ。ではまず、この世界についてから、お話致します」 「ああ、よろしく頼む」  レンは言った。 「この世界は今、とてつもなくおかしなことが起きています」
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加