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「じゃ、そろそろ行くね」
と、手をひらひらと振り、ゆっくりと離れてみる。わざと引いて女の様子を伺った。
「あの……」
俺の背中を呼び止める女の声にニヤリと笑い、次には優しい男の仮面を被り振り返る。
「ん? もしかして、おねえさん行くとこ無いの? 俺ん家で良かったら来る? 」
「いいの? 」
上目遣いに女が俺を見てくる。
「その代わり、スマホのGPSや電源は切ってくれる? 彼氏が乗り込んで来たらヤバいでしょう? 」
女は頷き、小さなポーチからスマホを取り出して綺麗にネイルされた人形のような細い指先でスマホを操作した。
「おいで」
手を差し伸べて細い指先を絡めて繋ぐと、キラキラとした瞳で俺を見つめる。
俺は、恋人繋ぎをした手を持ち上げ人形のような細い指先にキスを落とす。
ウットリと俺を見つめる女を見下ろす。
俺と何の繋がりも無い、心が弱った女を拾った。
ああ、楽しい夜になりそうだ。
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