壊す ~記憶の欠片~

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 フワァー。  店から出ると大きな欠伸が出た。  まったく不毛な時間だった。上目遣いに媚びを売る女、女の気を引こうとして騒がしく喋り笑う男。 女はを作り俺の腕に縋りつき、「この後、二人で何処かに行かない? 」と誘われてもその気になれない。面倒くさい付き合いなど御免だ。  こんな女に引っかかったら四六時中、ラインがきて、返信が直ぐ来ないと騒がれ、見張られたような暮らしになる。女なんて、ワンナイトで十分。  女のために使う時間なんて無駄だ。  笑顔で取り繕い、場の雰囲気を壊さないようにイイ人を演じて、何気ない感じで店を抜け出した。  春の夜の空気は少しひんやりして、見上げた夜空にぼんやり浮かんだ満月が黒い雲に隠れる所だった。  家の近くのコンビニで、スポーツドリンクや夜食を買い込み。  暗い道を歩いていると公園から、キーコ、キーコ、錆びついたブランコを漕ぐ音が聞こえ、こんな夜中になんだろう?と見てみると、女が一人ブランコを漕ぎながら泣いていた。  酷く寂しそうな、その様子に興味をそそられ、近付き柔らかいトーンで声を掛けた。  「おねえさん、どしたの? 一人でこんな所にいたら危ないよ」    ほら、いい人の仮面などカンタンだ。    
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