壊す ~記憶の欠片~

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 雲が切れて月明かりに照らされた彼女は派手な顔立ちで、まつ毛もエクステでもしているのだろうか人形のように涙で潤んだ瞳はキラキラ輝いて見える。そして、クルンとカールした髪。男好きのする派手目のメイク。キャバ嬢かなと思った。よく見ると口元が切れていて痣があり腫れていた。  「口元が腫れているよ。冷やした方が良いね」  俺は、買ったばかりのスポーツドリンクを差し出した。  女は、小さな声で「ありがとう」と言いスポーツドリンクを受け取った。  「大丈夫? せっかく美人なのに……」  俺は女に優しく微笑みかける。そして、しゃがみ込んで下から見上げるようにしながら心配そうに言葉を掛ける。 「どうしたの? 俺で良ければ話を聞くよ 」 女は、ポツリ、ポツリと話だした。  「一緒に暮らしている彼氏が、仕事辞めちゃって、人のお金でギャンブルばっかりやっているから文句を言ったら殴られたの」  「そう、辛いね。頑張って生活支えているんだから ”ありがとう” って抱きしめて欲しいのにね」    俺がその言葉を紡ぐと女は瞳を輝かせ、俺を見つめる。  弱った女の言葉に共感してみせ、良い人を演じスルリと心に入り込み、あとはエサに食いつくか?  「俺が彼氏だったら おねえさんみたいな人、大事にするのに……」  「また、上手い事言って、あんたモテそうだもん。そうやって女の子騙しているんでしょ? 」  「そんな、ことないよ。最近フラれっちゃったばかりだし」  そう言ってクシャと笑って見せた。  「えっ? じゃ、フリーなの⁉ 」  パッと女の表情が華やぐ、    ” カカッタ ” 俺は心の中でほくそ笑む。
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