奇才と呼ばれた男

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第2話 奇才の帰還  嵯峨が『甲武国』に帰還したのは、『祖国同盟』の崩壊から3年後だった。  『テロ』事件で死亡した、妻の墓の前で呆然と立ち尽くす嵯峨を知人が目撃したと言う。その時から彼の『嵯峨惟基』としての人生は再開した。  嵯峨惟基はその3年後、9歳の娘を連れて、『甲武国』を出国し、かつての軍人生活を始めた因縁の地、『東和共和国』暮らし始めた。  時は流れた。その17年後、平和な時代が遼州星系を包み始めた時代から物語は始まる。  時に西暦2684年『遼州星系(りょうしゅうせいけい)』。  地球から遠く離れた植民惑星遼州は、どこまでも『アナログ』な世界だった。  遼州星系を訪れた『地球圏』の人々は遼州星系の印象をそう評した。  そして中でも『東和共和国』は、まるで20世紀末期の日本を思わせる世界だったと訪れた地球人達はその奇妙な光景に首をひねるばかりだった。  物語はそんな植民惑星の『昭和・平成』な世界のビルの片隅から始まる。
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