おはよう

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 ここからが、僕の計画のスタートだ。冷や汗をかきながらハンドルを握り、夜景が見渡せる展望台へと向かう。高層タワーの展望台だ。エレベーターに乗りこむ頃には心臓がバクバクと脈打っていた。緊張、冷や汗、カーゴパンツのポケットに手を入れ、箱を確かめては、息を呑む。  展望台に着いた。 「わあ、綺麗!」  宝石を散りばめたかのような夜景が広がっている。綺麗なものは綺麗と素直に喜ぶその顔が眩しくて、僕は夜景どころではなかった。他の人がいないからか、美咲はまるで子どものように展望台を少し興奮気味に歩きまわる。子どもっぽい喜び方も、落ち着けば冷静になる。 「人も家もちっちゃく見える! 私、高いところ好きなんだよね」 「夜の高いところって、暗くって危ないことが多いんだけど、今は月明かりもあって安心だね」  そう。月も出ていて明るくて、誰もいない……今、この瞬間なら。 「なあ、美咲」  美咲は呼びかけられて、「ん?」と振り向く。長い髪がさっと揺れた。  僕がポケットに手を入れると、美咲は僕の方に向き直った。 「どうしたの? 探し物?」  もしかしたら、気がついたのかもしれないけれど。付き合った記念日に、急に呼びかけてポケットから取り出すような小さいものなんて、僕だって検討がつく。美咲は何も言わずに、僕の顔を見ているようだった。  手にかいた汗をポケットの中で拭い、ゆっくりと小さな箱を取り出す。立方体の白い箱。  美咲の顔をまだ僕は見てはいなかった。きっと驚いているに違いない。それとも予想していて落ち着いているかもしれない。 「良かったら、僕と」  僕は美咲の顔を見た。 「結婚! ……」  なぜだろう。美咲の目には涙で溢れていた。 「……してください」
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