おはよう

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 窓から差し込む朝日が眩しい。太陽に起こされるように、僕は眠い目をこすった。酒の酔いが戻らない。二日酔いの気持ち悪さが残ったまま、今日は仕事だ。  スマホを触る。ツイッターのチェック、ラインの通知、そして、毎朝の日課になっていることをやろうとして、ふっと息が止まった。音が聞こえなくなって、昨日の楽しかったはずの思い出も、昨夜の言葉も、走っていく美咲の背中も思い出されて、そこからは記憶がない。  やがて忙しない時計の音が、ベッドの上で動かない僕を、急かそうとする。  はいはい、わかりましたよ。しかも寝過ごしてたのか、時間ない。ゆっくりパンもかじれない。コーヒーを淹れる時間も無くなった。パンを口にくわえながら、髪のセットをし、スーツに着替え、カバンを引っ掴んで家を出た。  早足で歩いてい駅へと向かう。まだ冷たい冬の風を切っていく。二日酔いがさめるくらいの冷たさは気持ちがいい。きっと雨に打たれたら気持ちがいいのと同じ感覚だろう。 「仕事だ、仕事。昨日のことは一旦忘れろ」  自分に言い聞かせた。  そうだ。プライベートのことで仕事に支障をきたすなんて、ビジネスマンとして失格だ。 「でもそう簡単に忘れられたら、誰も苦労しない」  頭の中にいるもう一人の自分が訴えかけてくる。  いやいや、忘れていいものなのか? 忘れて自分の中で納得がいくのか?  頭のモヤモヤは風を切るように吹き飛ばせない。ずっとついてまわる。  やっぱり、今日はメッセージを打たないでおこう。打たないほうがいいだろう。そっとしておくほうがいいだろう。美咲のためにも、僕のためにも。ほとんど毎朝のようにメッセージを送っていた……。 『おはよう』という言葉。
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