不真面目

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「やれやれ。お二人はいつもあんな感じですね」 「ひゃ!?」  突然後ろから声が聞こえて、私は縮み上がった。  振り向くと、さっきのスーツの江崎さんがにこにこと笑っていた。  ――この人、本当に足音しないなぁ。 「ええっと」 「あ。わたくし、ココア様の兄上周りのトラブル解決担当させていただきます、弁護士の江崎牧人と申します」 「弁護士さん?」  胸に光っているひまわりのバッジは、確か弁護士さんの警察手帳みたいなアレ。  そんなおカタイ職業の人、私のフツーの知り合いにだって一人もいない。  なんだってこんなやくざの集会に? 「あは、わたくし、いわゆる『インテリヤクザ』でございます。ご存知ないですか?」 「い、いんてりやくざ……」  最近は警察の目も厳しくなってきて、やくざの摘発も増えている。  そんな摘発されたやくざを守るため。  あるいは切り捨てて他のやくざを守るため。  そういう仕事を専門にしている、やくざお抱えの闇の弁護士。  兄さんからはそんなふうに聞いていたけど、本当にいたんだ、インテリヤクザ。  やたらオーバーに語るからネタかと思った。 「チッ、カッコつけやがって」  峰雄さんは舌打ちしながらも、こう付け加える。 「ココアのお嬢ちゃん、コーラの野郎のことは安心していいぜ。ムカつくことにソイツ、弁護士としての腕は超一流だ」  兄さんのことはもちろん気になってたけど、そんな言葉が峰雄さんから出てきたことにちょっと驚く。  そんな私に、アラタくんが付け加えた。 「峰雄クンはツンデレだから」 「ツンデレって……」  こんなやくざだらけの中にいて、バラエティ番組なんかのときと同じ空気のアラタくん。  それがかえって、肝が据わりすぎているように見えて。  ――アラタくんは正真正銘の若頭なんだって。  そんなふうにちょっと複雑な思いを抱えていると。  部屋の一番奥から大仰な咳払いが聞こえた。
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