不真面目

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 それに合わせて、やくざたちが一斉に部屋の奥に向けて頭を下げる。 「うむ。私が勝手に決めた見合い相手だったが、皆と打ち解けてくれたようで何より」 「カシラぁ!」 「か、カシラ!?」  カシラってことは、この人が水島組の組長さん!?  やくざの組長さんってもっといかつくて怖い人を想像してたけど、見た感じ普通のおじさんだ。  ちょっとアクセサリーは派手で、そこだけやくざっぽいけど、そういう趣味って言ったらそこまでの感じ。  息子さんの峰雄さんのほうがよっぽどやくざらしい。  そんなことを思ってきょとんとしていると、峰雄さんが咳払いした。 「ココアちゃん、挨拶、挨拶」  なんて、アラタくんも肘打ちをする。  あっ、そっか! 黙って見てたら失礼だよね! 「すみません。えっと、アラタくん、じゃない」  普通にアイドルとしてのアラタくんを呼びそうになって、慌てて言い直す。  アラタくんがアイドルをやっていることに対して、組長さんがどう思ってるかなんてわからない。  というか普通はやくざの若頭がアイドルなんて、いい気はしないんじゃないかな。 「若頭の藤枝さんとのお見舞いに参りました、田中ココアと申します」  できるだけ深くお辞儀をする。  コンビニバイトでは頭を下げてばっかりだけど、ここまで深いお辞儀は卒業式のラスト以来だ。 「この度は兄の不始末のけじめをつけていただき――」 「その結婚ちょっと待ったぁー!」  突然ドアが勢いよく開いた。  聞き覚えのある声にびっくりして振り向くより、やくざたちが構えるほうが速い。  メリケンサックとか日本刀(ドスっていうのかな?)が多いけど、数人拳銃の人もいる。  ちょっと、拳銃はさすがにまずいでしょ!?  いや、メリケンサックも日本刀もまずいんだけど! 「ヒッ!」  案の定聞き覚えのある声は一瞬で縮こまって。  私はちょっと不安になってそっちのほうを見る。  そこには秋口には季節外れ過ぎる、あわてんぼう過ぎるサンタクロースがいた。  もとい、そんな謎の仮装をしたコーラ兄さんがいた。 「……兄さん、何やってんの?」
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