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「ホーホーホー! メリークリスマス!」
なんて、ビビりながらもあくまでバカの演技を続けるつもりの兄さん。
演劇部のホープのプライドか、詐欺師のプロ根性か。
私の婚約を何としてでも自分の責任で破談にしたい、その思いは嬉しいけど。
「兄さん。そんな、そこまでして破談にしようとか、しなくていいから」
「ちょっ、ココア! 言っちゃダメだろ! 作戦がバレ――って、あれ? 藤枝アラタ!」
兄さんがアラタくんを指差す。
私の部屋にあるポスターとかで、顔は知ってたもんね……。
「アハ! よろしくね、お義兄ちゃん」
アラタくんはくすくすと笑う。
今の一言で、だいたい私たちが何をしようとしてたか分かったみたい。
「えっ、おにいちゃん――ってことは、まさか!?」
「兄さん、知らなかったの?」
「いや。若頭が『実の息子の峰雄さんじゃない』ってことまでは噂で訊いていたけど、誰かまでは――」
チッ、と、当の峰雄さんがめちゃくちゃ大きく舌打ちした。
峰雄さん、抜いてないとはいえめっちゃドス持ってるしヤバい。
兄さん風に言うならマジやべー。
でも、峰雄さんはちらっと私とアラタくんを見て、ドスの柄から右手を放した。
これだけ失礼なこと言われても、若頭の家族になるかもってなったら止めるしかないみたい……?
兄さんが斬られなくてよかったのと同じくらい、そういう立場になっちゃったことが怖い。
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