不真面目

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「えっ、マジヤバいじゃん!」 「そうだよ、マジやべーんだって」  いつかはこうなるだろうなと分かっていたけど。  だけどこれからどうするんだろう。  完全に捕まる前に目をつけられてるってわかったからには、今のうちに高飛びでもするんだろうか?  コンビニバイトにしてはそこそこ居心地のいい今の職場を離れて兄さんについていくか。  先読みしてそんなことで悩んでいると、兄さんがこう付け加えた。 「まあ、サツのほうは組がなんとかしてくれるらしいんだけどさ」 「組って、水島組が?」 「シッ、あんま名前出すなって! どうせ出先だろ?」  驚いて訊き返した私を兄さんが叱る。  そうだよね、あんまり外でやくざの名前なんて出すものじゃない。  水島組。ここら一帯のブラックなこと全体のバックにいるやくざ。  兄さんを含む数名のオレオレ詐欺グループも例外じゃない。  って言っても、私が知ってるのは漠然と「バックについてる」とだけ。  詳しいことは知らないし、知りたくもないから訊いてないけど。 「じゃあもう解決じゃん。なんでそんなパニクってんの」 「いや、だから言ってんじゃん、マジやべーんだって!」 「だから、『マジやべー』だけじゃ何だかわかんないって!」  いくら兄さんでも、今回ばかりは要領を得な過ぎてムカついた。  ガチの舌打ちをかますと、スマホ越しに息をのむ声が聞こえる。  それでもまだ言い淀む兄さんに、私は最大音量で怒鳴りつけた。 「ハッキリしろ!」 「水島組が交換条件として若頭の嫁としてココアを差し出せって!」 「……は?」  あまりに意味が分からなくて、思わずスマホを取り落した。  小指にストラップが引っかからなかったら、あわや大惨事。  だけどそんなことはどうでもよくて。 「嫁って、えっ、結婚しろってこと!?」 「なんかそうっぽいんだよ! だから言ってるだろ、マジやべーって!」 「そんなのマジやべーだけでわかるわけないでしょっ!」
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