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ってか、本当に意味わかんないんだけど。
えっ、なんで? なんで私?
私が有力な政治家とかの娘だったら、政略結婚的なアレがあるのかなと思う。
でも生憎私は親ナシのコンビニバイトだ。
あるいはもし私が絶世の美女だったりしたら分からなくもない。
男でも女でも、ものすごい面食いっているものだ。
でも私は残念ながら十人並みの量産型でしかない。
そんな私と、水島組の若頭が結婚?
それもわざわざ兄さんを庇うことまで交換条件に付けて?
「明らかに怪しいじゃん、断んなよ!」
「んなこと言ったって、こっちがヘマしてるのに断れるかよ相手やくざだぞ!?」
「じゃあ何、兄さんの尻拭いで私を差し出そうとしたわけ!?」
思わず声が震える。
兄さんはそんなことしないと思っていたのに、裏切られた気分だった。
兄さんは電話の向こうでため息を漏らした。
「あのな……断れねえってのは俺がどうこうとかじゃなくてな。お前が断ったってなったらお前だってマジやべーだろうが! 相手やくざだぞ!?」
そう言われると、何とも言い返せない。
兄さんだって、私のことを犠牲にして自分だけ助かろうとか、そんなんじゃないんだよね。
わかってる。わかってるけど。
それでもいきなり結婚は荷が重い。
返事に困っていると、兄さんのほうから口を開いた。
「大丈夫だって。俺が救いようのないバカって見せかけて無かったことにしてやるから」
「そんなの、何とかなるの?」
「へへっ、演劇部のホープ、ナメんなよ」
「演劇部のホープって……それ、中学の頃の話じゃん」
なんて呆れながらも私はちょっとだけ笑う。
私はどうせ、不真面目にしか生きられない。
だからどうせ、結局自分の人生はどうなったっていいんだって気持ちがあった。
ヤケクソって言ったら聞こえは悪いけど……。
だから自分が強制結婚とかはあんまりどうでもよくて。
兄さんが本当に私を見捨てようとしているわけじゃないのがわかった、それだけで嬉しかったんだ。
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