七章 決着戦の話

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七章 決着戦の話

 私たちは一階の玄関前に移動する。なぜかというと、敵を館の中に入れないようにするため。 「もうそろそろ来るわ。覚悟しておいた方がいいでしょう」 「ですね」  私は杖を構える。杖は前に変形した状態のまま、その形を保っている。 「・・・!来たわ!多分だけど、3人くらいでしょう」 「そうですね。じゃあユイさんとノアさん、僕とシノで一人一人相手しましょう」 「人数的にもそれがいいと思います」  と言い、作戦が決まったところ。一人目が門を通ってきた。  一体目はほとんど成敗者と同じような姿をした少女。 「一人目は私が相手しましょう!」  手早く片をつけてしまおうと思った。それに、何故か自分が行かなくては、と思ってしまったから、勢いで自分が相手すると言ったんだ。 「彼方が何者か知らないけれど。ここに来たこと、後悔させてあげるわ!」 『そうか』  杖を振り上げる。それに応じるように、少女は手をかざす。私は少女の手よりある程度うえでほんの一瞬杖を振り落とすのを止め、横に、やや下に杖を下ろし、勢いよく少女の脇腹に杖を振る。 「・・・やあっ!」  魔力を込め、脇腹めがけて振った杖は、さえぎられることなく少女の脇腹に当たり、少女を気絶させるくらいだった。 『ぐ、ああ・・・』  そのまま静かになった少女を少しだけ見たが、動かないのを確認すると、シアさんとシノがいるところまで下がる。  どうやら2人目が来たみたいだけれど、二人目はノアが相手をしていた。それに、ノアの方が優勢に見える。  そうやって待機していると、三人目がやってきた。この人が最後だ。きっと成敗者たちのリーダーだろう。一番魔力が強い。三人目は使い魔だろう。肩に乗る限界くらいの大きさの黒い鳥、カラスに似たような鳥を載せている。  そんな本人は、白いシャツに黒いズボン。裾をブーツの中に入れている。感じからして少女とは言えないかもしれないが、まだ子供のように見える。 「あんたらが相手か。ほら、行っておいで」  と言って、少女は鳥を放つ。その鳥は一直線にシノとシアさんの方に向かう。  私は、鳥の前に杖を振り、二人の前から離れさせる。少ししか遠ざけられなかったけれど、どうやら鳥は相手が私だとわかったみたい。私向かい襲ってくる。  私はその攻撃をすべて杖でかわす。ただ、鳥の攻撃は隙がなく、私は防いでいるだけで精一杯な状態。  一向に倒れない私に、早く決着をつけたいのだろう。鳥は嘴だけでなく羽根でも攻撃し始める。二刀流となれば、私には優劣を逆転させるために残された手段は一つしかない。  杖をいったん下げ、そこから鳥の腹あたりを狙って杖を振る。杖は当たり、少しだけ鳥がうろたえる。私はその隙をつき、魔力を鳥に向かうように杖を向ける。そして、蔦が鳥を動けなくなるくらい絡めとるところを想像する。 「はああっ!」  私の予想通り、私が呼び出した蔦は動き回る鳥を絡めとるように動く。私は鳥に全精神を集中させ、蔦が鳥を捕らえるように魔術をかけ続ける。  鳥はやがて大量に出てきた蔦に捕らえられ、動きが鈍くなる。その隙を狙い、魔力を杖に集め、杖を鳥向かい投げる。  私が投げた杖は鳥に見事に当たり、鳥を気絶させる。鳥を捕らえていた蔦をわずかに残し、消す。こうすれば使用魔力が少なくて済む。  と、どうやらノアの方も処理が終わったらしく、私のところにやってきた。と、シノから強力な魔力が放たれていることに気づく。  その後、あたりに強い白い光が走る。私はあわてて傍に来たノアを無理矢理しゃがませ、私も伏せる。  音のない、白く強い光の世界が私たちを飲みこんだ。  一方。シアさんとシノのあたり。 「まだまだだな。さあ、その少女を渡せ」 「嫌だな。シノは渡さない」  少女はシノが目的のようだ。だからあの時、鳥が一直線にあの二人の方向かって飛んで行ったのだろう。私が防いでよかったと思う。 「やめて・・・、皆傷つけあうのは嫌だよ・・・!」 「シノ!やめておけ!」 「お兄ちゃん・・!いや・・・!」  シノは周りの声が聞こえなくなったみたい。どうやらこれがシノの魔法じゃないかな。自覚はないだろうけど。 「やめて、みんな・・・!やめてえええ!」 「シノ!」  シノの周りに白い光の魔法陣が浮かび上がる。その陣は、勢いよく広範囲に広がり、白い光の世界を創り上げていった。 
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