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いつものように館にやってきて、することもなかった私は部屋の掃除をしていた。彼女は一切変わっていない。それがそれでいいんだけど。
と。突然に私に話しかける澄んだ声が聞こえた。
「・・・ね、ねえ」
「ん?なに?」
その声がその少女の声だとわかるのに、少しの時間もかからなかった。
「・あ、彼方・・・名前は?」
「私?私はノア、深木ノア!」
「ノア・・・、ね。私はユイ、示都ユイ。よろしく・・・、ノア」
その少女はユイちゃんというらしい。ユイちゃんはしばらく喋っていないらしく、わずかに声が声は掠れているけど、とてもきれい。
ユイちゃんが喋れること、そしてきれいな声だってことが分かったので、明日は思い切っていろいろ聞いてみたい。あんな姿になる前の事、私が来るまでの事。ユイちゃんについてもっと知りたい。そして、私はユイちゃんの友達になりたい。もう友達だってユイちゃんは言うかもしれないけど。
今日も相変わらずユイちゃんのところへ行く。今日はどうやらユイちゃんは寝ているみたい。普段の感情が消えた様な無表情とは違う、あどけない表情。かわいい。
「むぅ・・・・、かわいい」
だけど、ずっと寝かせているわけにはいかない。起こしてみよう。
「ユイちゃん?まだ寝てるの?もう昼だよ?」
「あと少しだけ寝かせてよ・・・コトネぇ・・・」
「どうしたの?夢でも見てるの。私はノアだよ?」
「ええ・・・・・・、!!!!!」
「あ、起きた?」
ベッドに横たわってるユイちゃんに声をかける。夢でも見てるみたいで、昔の友達の名前だろう。・・・コトネちゃんってどこにいるんだろう?
「・・・・・・」
「もしかして照れちゃってる?」
「うううるさいわねねねね」
「落ち着いてよー、ユイちゃん?」
普通にしゃべれるじゃない。これまで見てきたユイちゃんの顔は無表情だったけど、今日は色々な表情を見れた気がする。できるなら抱き着いてみたいけど・・・、それじゃ私が傷ついちゃう、ってユイちゃん、止めるだろうな・・・。
「ねえ、ユイちゃん。ユイちゃんは何で魔術師になったの?」
その部屋にあった無傷の椅子を持ち出し、ベッドのそばに座る。
「えぇ・・・、もともと私は魔力を持っていたから・・・かな。だけど、私の友達は魔術師になりたくないから、人に魔力をあげてた」
「へえー。私も魔術師になりたかったんだ。でも、私は魔力を持たないからもう諦めきっていたの」
「・・・・・、それなら、私の魔力いる?」
「え、それ本当!?」
ベッドに体育座りをして、私を見つめるユイちゃん。冗談のようには見えないんだけど、案外冗談だったら笑って済ませれるかなあ。
「ノアがいいなら、別にいいけど。私がうまく魔力を渡せられるか分からないだけ」
「別に大丈夫だよ。私も魔法使ってみたいもの!」
そういって無理矢理に近い状態でユイちゃんを説得。私は一週間後に魔力を受け取ることにした。楽しみすぎる。
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