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四章 新術士の話
(語り手 ノア)
ユイちゃんから魔力をもらって一日。今日もいつもの通りあの館へ向かう道を歩いていく。
と、ある程度歩いて行ったところで、館の全体が見えてくるあたりで違和感に気づいた。蔦が燃えているのだ。それも、位置から考えてユイちゃんの部屋があるあたりの。
「・・・!!?ユイちゃんっ!!?」
慌てて私は走る。私が館に着くまでの道で、一人すれ違った。普段は誰ともすれ違わないから、多分この人が犯人なんだろう。だけど、そんな人に構っている暇なんてなかった。ユイちゃんが無事か確かめたかった。慌てて館についた私は、扉を押し開け、階段を駆け上がる。
「ユイちゃん!」
「ノ・・・、ノアっ!来ないで!」
急いでユイちゃんがいる部屋に向かう。
「だめ!」
「嫌だ、ユイちゃんを一人にはしないって決めたもん!」
部屋に入った私は、ユイちゃんの手に私の片手を絡め、腰に手をまわして立たせる。とりあえず、必死だった。
「な、なにするの・・・?ノア」
「あのままだとユイちゃんが燃えちゃうもん!それに、ユイちゃんが一人になっちゃう!それに、燃やしてる火の目的はユイちゃんを燃やすことだから、もういないの。今逃げれば、もう燃やされることはないから!」
「の、ノア・・・ッ!」
ユイちゃんの手を取り必死になって館の外へ走り出る。
館の外へ走り出て、庭へ出る。安全だとわかった私は、繋いでたユイちゃんの手を放す。
「これで、大丈夫なんだ・・・」
安心したような様子のユイちゃん。そんなユイちゃんの肩に手を置く。
「ほら、歩けたでしょ?」
「うん。まさか歩けるとは思ってなかったけど・・・」
「多分また戻れるけど、どうする?」
「もう一度戻りたい。この館が私の数少ない居場所なの。だけど、ちょっと蔦を片付けたいんだけど、手伝ってくれる?またこんなことが起こらないようにしたいから」
「いいよ!やろうやろう!」
ユイちゃんの最近の様子を話すと、親は喜んでいた。どうやらあの状態になる前のユイちゃんに会ったことがあるみたいで、その時の様子をちょっと前に話してくれた。
どうやらユイちゃんは軽度の人見知りで、あまり積極的ではなかったみたい。だから、私に積極的に話してくれるユイちゃんの様子が嬉しいみたい。
今日もユイちゃんのところに向かう。今日は館に入る前に入り口のドアの蔦を切る。手を伸ばして蔦を取り、ドアに絡まっている蔦を取る。
ちょっと集めの軍手をしているため、棘は刺さらない。だから難なく蔦を集め、山積みにして火を生み出す。
「まさか蔦の術士からもらった魔力が火の魔術師を生み出したとは」
魔力って人によるんだなあ。と思いつつも火の番をする。
しばらくすると蔦は燃えきった。と。
「ノア、なにしてるの。素直に入ってきてくれていいのに」
「だって燃やしちゃったんだもん。そしたら火の番しなきゃでしょ?」
「・・・確かにそうだけどさ」
ドアの前でやっていたのを感じたのだろう。ユイちゃんがやってきた。
「じゃあ今日もやろうよ!今日はどこやる?」
「一階の終わっていないところと、階段、二階。ノアは階段やってくれる?」
「おーけーおーけー!」
私は立ち上がり、階段に向かう。
「今日はここに集めて。そしたら後でまとめて燃やしちゃうから」
「わかった」
ユイちゃんは館の奥に向かっていく。昨日の続きを探しに行ったんだろう。
私は階段にこびりついている蔦を持ち上げ、運びやすい位置で蔦を切る。
そうやって、今日も1日中そうやっていた。楽しくて、時間がたつのを忘れてしまう。こんな時間がずっと続けばいいのに―――。
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