序章 魔術師の話

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序章 魔術師の話

 ――茨に囲まれた城がある。その城には、茨の魔女が住んでいる。強い強い魔法にかけられた、魔法使いが。  私は魔法使い。よくみんなは私の事を茨の魔女と呼んでいる。実際一週間くらい前までは普通に暮らすことはできていた。魔法陣を描くのを失敗して、こんな状態になっちゃったんだ。  私は今、森の中にある大きな屋敷にいる。もともと私の家で、私以外誰もいない。物心ついたころから、私は一人のメイドと共に住んでいた。一週間前に魔力暴発した時、私はメイドさんを守るため、家から追い出した。少し罪悪感はあったけど、仕方がないこと。  私が呼び出した蔦は二日三日で家全体を包み込んだ。  自分の部屋に籠っている私。私の背中には大きな羽根が生えている。羽根と言っても、天使のような純白の物ではなく、悪魔のような濃緑の羽根に色鮮やかな緑の蔦が絡まった状態の。所々桃色の花が咲いている。   編み込みがついたシャツに、二重構造のスカート。体の半分に蔦が絡みついている。力の開放によって私はこういう姿になってしまった。もう誰にも顔を向けられない。一人でここで死んでみせる。そういう覚悟を決めていたのだ。  ――私がこれだと、みんなを傷つけてしまう。  そう思ってわざわざ一人で孤立しているの。私だって一人は好きじゃない。一人が好きだったら、最初からこんなことしていたはずなの。だって、手早く一人になれるから。  魔術失敗から一か月程度たったある日。私の前に一人の少女が現れた。異形に近い私を見ても、悪魔みたいな姿の私でも。一切恐れず私に接してくるその少女は、この姿での私の、唯一の友達に等しかった。  毎日毎日通ってくるその少女に対する感情は、徐々に傷つけたくない、守ってあげたいというものに変わっていった。私は、そんな私に驚いていた。   でも、人間一ヵ月じゃ感情消し切れないんだね。頑張って感情を押し殺していたのに、守りたいって思える自分がいる。それなら、その少女を守ってしまおうと。そう私は決意する。
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