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私はこの大学1番の美人と呼ばれている。
確かに顔もスタイルも自分でも自身を持てるほどではあると思う。
こうやってカフェに向かうだけで男たちの視線をあびる。
「あれがこの大学の女神か。」「やっぱり可愛いなぁ。」「挨拶してみろよ」「いやいや。無理だろ高嶺の花だぜ?」
ヒソヒソ話す男子をちらりと見て微笑む。
「今絶対俺の事見てた!」「いや!俺に笑顔をみせてくれたんだ!」
男どもは馬鹿ばっかりだ。ちょっと微笑むだけで簡単に落ちてしまう。こんなことくらい自分の株をあげるためならいくらだってしてあげる。
「あ!ユウナ!こっちこっち!」
いつものソファーの席に女が手を振るのが見えた。白いニットにデニムのショートパンツ。私と釣り合うくらいの女。唯一ほんとに友達と言える相手。私と釣り合う相手だ。
「さゆり!おまたせ。席取っててくれたんだ。」
「うん!当たり前でしょ?で?遅れた理由は?」
「また告白された。」
「またー?付き合うの?」
「一日だけね?」
「え。あんた1年に何回彼氏変えるの?」
「365回くらい?」
無邪気な笑みを浮かべてピースして見せた。さゆりはそんな私を見て呆れ笑いをうかべる。
「日替わり彼氏じゃん。いいなぁ、私も男欲しいー」
「さゆりも可愛いんだからすぐ彼氏できるよ」
「ゆうなに言われたら自信持てるわ。校内1の美人だし」
「またまたー。お世辞言っても何も出ないよ!何飲む?」
「私ミルクティー!」
「じゃあ私はレモンティー」
2人の笑い声がひびきわたる。ここは私の楽園。私の居場所。私がお姫様でいれる場所なのである。
「あ!すいません!ミルクティーとレモンティーお願いします!」
さゆりの元気な声がひびく。
周りは勉強したり、カップルがイチャイチャしていたり。男どもがこちらを見ていたり、みんな思い思いの時間を過ごしていた。
「わたしゆうながいなかったらこの学校辞めてたかも」
ニヤリと笑いながらさゆりはいう。
「いきなりなーに?」
「だってこんな学校つまんなくない?大学ってこんなに面白くないの?」
「でも私がいなかったら確実にさゆりが1番人気になってたかもよ?」
冗談っぽく笑ってみせる。さゆりはそれに吹き出し笑いをした。
「自分で言っちゃう?」
「でも実際そうだし?」
また2人の笑い声が響き渡る。
コップに入った氷がカランと音を立て崩れた。周りに着いた水滴がたれて机を濡らしていく。何時間でもさゆりなら話せてしまうのが不思議である。
「おまたせしました。ミルクティーとレモンティーになります」
「ありがとうございます」
2人同時にお礼を言うのがなんだかおかしくてまた笑った。
しょうもないことも何故かさゆりとなら笑えてしまう。私と釣り合う初めての人物だからだろうか。
「ゆうなって誰でも落とせるの?」
さゆりがにやにやしながら私に問いかけた。
「まぁ、男のひとりふたりは余裕でしょ」
意地を張って笑って見せた。男なんて媚びを売っていれば勝手に落ちるもの。そう思っていた。誰だってそうだ。手を出そうとすればほかの女の男だって簡単に落とせてしまう。
「じゃああいつ。落としてみてよ。」
さゆりが指さした先にいたのは髪の毛はボサボサ眼鏡をかけパソコンに向かう男だった。
正直あんな女慣れしてなさそうな人物楽勝だと思い込んでいた。
「任せて。すぐおとせる」
そう言ってレモンティーを1口のみ鏡を開いて自分の顔を確認し席を立った。
「お隣いいですか?」
いつもの口実。隣の席に座るために確認をとる。私の事ぜったい知ってるはずだし。ここから話を進めたら余裕。そう思っていた。
「ご自由にどうぞ。僕作業中なので。静かにしてくれるなら。」
想像と違う反応だった。私だよ?この学園で1番の美人と呼ばれている私だよ?そんな態度とる人普通いないでしょ。
「あ。ごめんなさい。お邪魔だったらすいません。なんの作業ですか?」
めげないできいた。少し間があって返事がきた。
「あの。作業中です。静かにしてください。」
そういって眼鏡をくいっとあげコーヒーを1口のみまたパソコンに向かいだした。
ブラックコーヒー。
飲み口に着いたコーヒーが少したれる。
揺れの中にうつる男は眼鏡で反射して顔がよく見えない。前髪でも顔が隠れるくらいだ。
私はレモンティーをのみ作業が終わるのを待った。
ピロン。
スマホの画面が光る。一通のLINEが来ていた。
さゆり:お手上げですか?笑
ゆうな:そんなわけないでしょ。作戦よ。
さゆり:思ったより手強そうね。頑張って。
ゆうな:余裕よこんなの。
そう。余裕なの。この戦いは私が勝つ。
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