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日下 雛奈
この春に入部したばかりの一年生。
幼いときからテニスを習っていたらしく、一年生ながらもうレギュラー入りは確定かと言われるほどの腕前らしいけれど…
彼と顔を見合わせて微笑む日下にスマホを向ける。
数枚シャッターを切ってから、次は彼単独の写真を一枚だけ撮った。
「いつもいつも彼の周りをチョロチョロしやがって」
淡い栗色の髪を一つにまとめ、頭のてっぺんでポニーテールにしている日下の写真をまじまじと見つめる。
悔しいけれど、こいつはその見た目も可愛らしい。私のような“美人”ではないけれど、男は放っておかないタイプだろう。
「やっぱり、早めに消しておくべきね。またあの子に頼まなくっちゃ」
人間の“無自覚”ほど厚かましいものはない。
彼に近づく者には、きちんとそれを分からせてあげなければいけないのだ。
それが私のためであり、彼のためにもなる。
「だって私、婚約者だもの」
これくらいのことは当然だ。
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