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「ただいま」
あの後もいつも通り、生物室で自らの仕事をこなしつつ彼が部活指導を終えるのを見守った。
職員室には用があるとき以外足を向けない。
他の先生たちの視線が気持ち悪いからね。
舐めるように見てくる男性教師に、嫉妬から敵意の視線を送ってくる地味な女性教師。
本当に、世の中他人のことを気にして生きているくだらない人間ばかりで嫌になる。
「みんなもっと、自分のことに目を向ければいいのに」
居間の電気は付けぬまま、棚からコップを二つと冷蔵庫からペットボトルのトマトジュースを手に取り、寝室に向かった。
「ただいま、悠くん」
暗闇の中、壁にもたれ掛かり座っている悠くんに挨拶を済ませ、ベッドサイドとドレッサー横のライトだけを付けて部屋中をぐるりと見渡した。
「はぁ」
やっぱり、この空間が一番落ちつく。
寝室の壁一面は、二年かけて集めた柏原の写真で埋めつくされている。
こうすることで私は常に彼の視線を、存在を、身体全体で感じることができるのだから。
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