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生物室のドアを開けると、1年B組の生徒たちはすでにきちんと着席していた。
ただそこに日下 雛柰の姿はない。それがなぜなのか、理由は分かっているけれど...。
「はい、それでは今日は遺伝子組み換えについて学んでいきましょう。教科書23ページをーー」
授業を初めても尚、後ろの席の生徒は何やらコソコソと話しをしている。
耳を澄ませなくとも自然と聞こえてくるその会話は、もちろん日下のことだ。
「今回は顔の右半分だって」「右目、失明しちゃったらしいよ」「またテニス部の生徒が狙われたね」「東條先輩の時からまだ数ヶ月しか経ってないのに」
東絛か...いたわね、そんな子。
テニス部3年のエース。いえ、元エースね。
あの子の怪我はそんなに酷くなかったはず。防御反応が素早かったから、硫酸がかかったのも顔の左半分だもの。あと左腕ね。
それなのに、それ以来もう学校に来ないだなんて甘ったれているわよね。親の金でこんなに良い高校に通っていたくせに。
でも、今回は少し濃度が濃かったのかしら。
失明までするとは思わなかった。
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