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プロローグ
「難しいんじゃないか」
「難しいでしょうね」
私は地方公爵の娘エルセン=ユリシアス。
父は地方領主のユリシアス。母は地方貴族の娘マリアンだ。
「アイドリアンは地方貴族の息子とはいえ、宮廷での重要人物。いくらお前が地方公爵の娘で、美人で賢くて、可愛くてスタイルが良くても、難しいんじゃないか」
「難しいでしょうね」
父と母は、私に甘い。
でも、私の結婚話を聞いて、難しい顔をしている。
私がアイドリアンとの結婚を望んだせいだ。
国一の重要人物と言われるアイドリアン。私には地位も財力もあり、その男を結婚相手に指名しても、おかしいことでない。
でも、父は、それすら出来ないと言う。
理由は、彼が優秀で、国の人材だから。
「なんで、なんでよ?」
私はプライドが折れ曲がり、自分の父母に卑屈にならねばならなかった。
「なんで、私とアイドリアンがつり合わないっての?」
可愛くて賢くてと誉めてくれるけれど、言っていることは同じ。
私が彼に見合わないから。
そんなことを言われて、腹が立たないほうがおかしい。それも自分の父母に言われて。
たしかに、彼は重要な人材で、優秀であるけれど。
私が合わないなんて言われて、黙っていられるわけがない。
「あいつは優秀だから、次期宰相候補にも上がってる。そんな奴とな」
「エルセンでなくても、誰でも難しいっちゃ難しいけど、難しいわ」
渋る両親に、私は業を煮やして言った。
「あいつでいいから、何とかして」
「だったら、どうして、それだけ、エルセンは、アイドリアンでないといけないわけ?」
母が聞くことの、なんとのんきなことか。
花壇が見えるティールーム。
白い髭の父と、着飾った母の前で、青いドレスを身にまとった私は立ち尽くした。
「それはっ・・・」
私は過去を思い出した。
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