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舞踏会での出会い
「お嬢、とうとう、やりなさんですかい?」
ラッカは、懐から結婚指輪を取り出し、私は周囲に見られないように、ひったくって手の中に隠して、周りをきょろきょろした。
「ここまでやるとは、お嬢様もひでえ。いや、大したものだ」
これを自分がもらったと触れ回り、周囲を固めるのだ。
「その悪党ぶり、わっしも見習わねえと」
どこに感心してるんだか。
「ラッカ。あんたにはちゃんと報酬をたんまり上げるからね」
「御父君様の家臣に何卒、お引き立てを」
「それも任せておいて」
ここまでしたら、私ももう後に引き返せないだろう。
いや、それよりも、ここまでするまでに、アイドリアンよ、分かれ。
(やるわよ)
私はそそくさとその場を離れて、飲み物がある壁の近くへ走った。
そこで、ワインをいっぱいぐいっと空けてしまうと、意気揚々とした気合がまた沸いて来た。
「よーし、これで」
さあ、とんでもない見世物の幕が上がるわよ。誰から始めようか。
ふーっと大息を吐いて、周りを見渡した時、ぐるっと一回りして、最後にばっちり目が合った人がいた。
あまりにばちっと合ったものだから、その人も私から目が離せなかった。
髪をひとまとめにして、地味な服装をしているが、毅然とした表情、悠然とした目つき、気品のある物腰、あたりの人間とはひとあじ違う存在感。
「あなたは・・・・」
この国の王様バンクリスだった。
私が驚いたのも当然だ。
この国の国王だもの。
言いかけて、王様バンクリスはしっと口元に口をあてて制した。
「お忍びで来ているんだ、邪魔をするな」
お付きの者の男が、私の周りをうろちょろして、それとなく注意する。
本物だ。
「ユリシアス公の舞踏会は有名でな、一度来てみたかったんだ」
王様は打ち明けてくれた。
「これは・・・父の代わりにご挨拶を申し上げます」
「堅苦しいことはするな。ばれるから」
「は・・・」
緊張しながら、はいそうですかと離れるわけにもいかず、私はやむなく王様の横の席に座った。
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