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政敵に頼んでみる
「もう、付き合いきれません」
ヨゼフィーにも見放され、ラッカにももう無理ですと言われた。
「何もアイドリアンでなくても、エルセンなら、ふさわしい人がいるわよ」
リリーアはそう言ってくれたけど、私は悔しかった。
やけくそだわ。やけくそシュークリーム食いよ。
「ん、待てよ」
それでも、私はまた凄い陰謀を思いついたのだ。
計略というのは、次から次へと思いつくものだ。領主の娘として、生まれも育ちもいいはずなのに、なぜ?
アイドリアンを副宰相を引きずり下ろすというのはどうだろうか?
そして、普通の男に戻し、私にすがらせて、結婚させるのだ。
地位があるから主のご令嬢だの、時期がまずいだのと言われる。
なら、そもそも今の仕事を取り除いたらいい。
ヨゼフィーもラッカも手伝ってくれないので、私は一人で行動した。
「え?私と手を組め?」
私は近隣の領地主クサーバーに声をかけた。
隣地方の男爵で、遠縁にあたるクサーバー領地主。
領地の合併により、わが領土に参加することになり、今後新たに副宰相の一人となり、次代、宰相候補と呼ばれている男だ。
まだそれほど出仕はしてないのだが、アイドリアンの政敵とも言われている。
「いや、はや、私に声をかけてくれるとは、お目が高い」
副宰相の予定の男は、長い前髪を垂れ下げ、態度が大きく、気障で、いけすかない男だったけれど、私は我慢した。
私の仕事には向いている人物だ。
「では、私と手を組むからには、王国の王座に近い皇太弟、次期皇太子クルミンスを推薦するようにしてもらわなくては。エルセン殿であれば、父君に話がしやすい。そう、父君に進言してくれますね?」
国王バンクリス。
この前、舞踏会で会った気の良いおっちゃんは、息子が二人いる。
そのうち、皇太子になるのはどっちだったっけ?
ちょっと私には分からない話なので、断った。
けれど、クサーバー伯はしつこく言い募る。
「皇太子を一丸となってお守りしなければ、この国は滅んでしまいます。この国の次期皇太子をお守りするための力は、一つにまとめなければ大きな力にはなりません。どうせ決まったものを応援するだけですので、大しな流れに乗るだけのことです。ですが、こういうのは立場を明確にしておかねば後々憂いを招きますので、お願いします」
政治家なので、政治的な政策や計画にうるさい。
やむなく私は、
「では、父に話はしておきましょう」
と話を通すだけにした。
「いいでしょう。では、私が宮廷に入った暁には、あなたのしもべとなりましょう。なんでも言うことを聞きますよ」
ヨゼフィーとラッカに続いて、忠実な部下を入手することが出来た。が、私は喜びを感じることはなかった。
なんだか気障な男がだんだん、億劫になって来たので、密談は次に詰めるとして、いったんクサーバー邸を後にした。
それから、しばらくして、父が王宮の中にいるときを見計らって、クサーバーの言葉を推薦しようと、私は父の執務室へ向かった。
すると、
「な、なんということだ」
まだ何も言ってないのに、父の部屋の扉を叩く前から、父の驚いた声が聞こえる。
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