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騒動
ばん、と部屋の扉が開いて、慌てて宰相や武装した兵士が出ていった。
「父上、何かあったのですか?」
私は父の部屋に入って、父に聞くと、父は執務室の机について、真っ青な顔をして額に手を当てている。
額には汗をかき、その目は宙を見て空虚に泳いでいる。
「おお、お嬢様。大変なのですよ」
父の右腕のヨゼフィーは青い顔をして、父を支えている。
「どうしたのです?」
再び聞くと、父は初めて気づいたように顔を上げ、まだ衝撃が冷めやらぬ口調で言った。
「わが一族が、謀反ありと密告され、国王バンクリスから討伐の命令が発せられたのだ」
「な、なんですって?」
父は脱力し、ぶるぶる震える手で頭を抱えた。
「我が一族が、王国の王座に近い皇太弟、次期皇太子にクルミンスを推薦したとかなんとかと言われとる。正当なお世継ぎを廃して、謀反を起こそうとしていると疑われた。国がピンチだ」
「え?」
その言葉を聞いたことがあるのは、聞き間違いか?
いや先日、私が聞いたこととそっくり同じことだ。
クルミンスを推薦しようとしてるのはクサーバー領地主で、それがなぜ我が家に謀反がかかっている?
いったいなぜ?
「殿下、大変です。国の将軍ドルフが我が領地を討伐すると、そこまで来ています」
なぜか分からないが、考えている余裕もないみたいだ。
伝令が入って、その後は、大臣が慌てて走り回り、武装兵士があちこち配置され、宮殿から逃げる召使や役人、大慌てする村の人々と、天地がひっくり返ったような大騒ぎ。
「お嬢様は、私が命にかえてお守りします」
こんな時、ラッカが男らしいところを見せたけど、私は感激しているどころでなかった。
最後には、父は母などの家族を一つの部屋にまとめて、しっかりと抱きかかえ、迫る敵に刃を剥いた。
「皆の者、仕方ない。戦おう。我らは疑われることはしていない。最後まで、清廉潔白を訴えるぞ」
と覚悟の自刃を匂わすことまで言われて、私は情けなくて、悲しくて。
詳細は分からないけど、きっと私の知ることが何か関係している。
そう思った私は、すくっと立った。
「え、お嬢様?」
ヨゼフィーは慌てる。
「父上、私が国王バンクリスに話をつけてきます」
「何をする気だ、お前」
額に汗を浮かべた父が言う。
「我が一族が謀反など起こしてないと言ってきます。我が地方が謀反など起こしてないんのは明白ですから。だから、王都へ行って、国王に正しいことを伝えてきます」
「やめておきなさい。エルセン。危険よ」
母マリアンが必死で取りすがってくる。
「謀反を疑われているのに、真っ先にお前が捕らわれてしまうぞ。国王軍が動いてるんだ。大きな流れには逆らえん。わしの命でなんとか償って、お前らを助けてみせるから」
「そんな犠牲が絶対駄目で、最も避けたいことなのです。父も母も家族も、この村の誰も失えません」
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