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私の強引な謁見
私の大事な領地内で、何一つ奪われてはならなかった。
あの国王なら話をつけられる。
舞踏会の王の姿を思い出したら、私にはやれる自信があった。
「私もついていきます、私が姫をお守りします」
ラッカが私の護衛について来てくれた。
道々、兵士に捕らわれそうになったけど、ラッカが応酬してくれて、私を逃してくれた。
私は馬を走らせ、王都まで急いで行って、王に面会した。
「王様、我が父が謀反など、考えもしないことです。父は真面目一徹で、領地を守ることだけに専念してきました。その苦労を認めていただき、このたび、王様から国として稼働することを認めていただいたのです。そんな父が謀反するはずがございません。する気もありません」
「おう、お前か」
大きな王宮の広間で、最奥の檀上に金銀細工で飾られた豪華な椅子に座った国王バンクリスは、以前の夜の舞踏会に見た調子とは違う、威厳に溢れた姿をしていた。
金の王冠を被り、白いファーがついた赤いマントを着て、金銀細工のはいった豪華な衣装を着て、見るからに王様。
老いた壮年の王は近寄りがたい酷薄さも漂っていたが、私を見る目つきは依然見た、共に宙を見た、優しいままだ。
「お願いします。軍を引き揚げさせてください」
私は私の伝えたいことが伝わるように、必死で膝まづいて、なんとか出兵を取り消してくれるように願った。
ラッカも右腕に怪我をしながらも、健気に頼んでくれた。
「結婚したくて、私に頼んだ、エルセンだな?」
「はい」
「お前がそう言うなら、そうなのだろう」
「え?」
「どうやら誤報が伝わったようだ。私は止めたのだがな。大臣たちが紛糾するので、調査がてらの派遣だと認めたら、おおごとになってしまった。兵は引き上げさせよう」
「え・・・は、はい」
王は私を見て、ぶぶっと吹き出す。
「お前の国がそんなことするわけねえよな。お前がな。あの、結婚したくて駄々をこねてたお前の国がな」
「は、はは。はい」
「クルミンスを担ぎ上げようなんて、あの平和な国に出来るわけない。な、お前たち」
家臣たちはははっとうやうやしく頭を垂れる。
とっさのことで、私は信じられなかったけれど、うろたえながらも、何とか無事済むことが分かった。
やった。
これで、疑いが晴れた。
王様が私を信頼してくれた。
「お前みたいな人間がいる場所に、謀反などあるはずない。あの夜のおかしな出来事は、楽しくて、面白かったぞ」
私は必死なのだ、これでも。
でも、王様は面白がってくれたので良かった。こんなものでも人を楽しませることもあるのだ。
私のしょうもない結婚への策略が、父の謀反の疑いを止めることになったのなら、良かった。私も本望だ。
「あ、ありがとうございます」
「また、お前の面白い話を聞かせてもらいたい。用意して待ってろよ」
「はい」
どうやら、王様は私を気に入ってくれたようだ。
自分のしてきたことに、私はちょっぴり自信を持った。
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