第一の強引な手法 会話

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第一の強引な手法 会話

「アイドリアンは理想が高いっすよ」  公国で父の副大臣を努めるヨゼフィーは、私に忠実な家来だ、何かと私の世話を焼いてくれる。  普段は宮廷で法律を作ったりする父の右腕でもあり、アイドリアンの同僚でもあり、政治のことはよく知っている。 「アイドリアンには良い思い出がある。昔、大事にしてくれた思い出が。だから、私は多少強引にでも、彼を手に入れたいの」 「もう、お嬢様は男にもてないんですから。伯爵や男爵もお見合いしても、断られたじゃないですか、その上の、いい男で、次期宰相で、将来有望な男なんて無理ですって」 「やるったら、やる。私はこれにかけてるの」 「特別難しいのをお望みなんだからな」 「いいから、あんたは、私に有利なこと黙ってやって」 「でも、あいつはエルセンお嬢様には高望みすぎますよう」  私はヨゼフィーの頭をがつんと殴った。  貧乏貴族で、私に頼んでくるから父に紹介してやり、副大臣になれたのも私のおかげだというのに、私にはって何だ。  まるで私が夢だと分かって人気男優を追いかける人間みたいでないか。  公爵の令嬢なのに。  ヨゼフィーには言われたくない。  そう、いきなり結婚をと言っても、無理だった。  まずは会って話してみる。  年頃になってからは、男女は親しくしないという不文律から、親しく会話しなくなって長い。  そうそうまずは会話から。第一は会話。  会って話してみないことには、何も始まらない。  私としたことが。 「ちょっと、アイドリアン副宰相」 「これは、伯爵令嬢様、こんにちは」 「こんにちは、アイドリアン殿」  黒髪、鋭い黒い目に、硬質な声が響くと、生き生きとした森の神みたいに見える。  それは、小さい頃から変わっていない。 「結婚して、アイドリアン」 「すいません。出来ません。私は職務がありますので」  がーん。
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